• 2024-09-29

メルセデス・ベンツ、シュトゥットガルトにバッテリー開発センター「eCampus」を開設

写真左から バーデン=ヴュルテンベルク州のヴィンフリート・クレッチマン首相、メルセデス・ベンツのマルクス・シェーファー取締役最高技術責任者、メルセデス・ベンツのオラ・カレニウス取締役会長、ロベルト・ハベック連邦経済・気候行動大臣

メルセデス・ベンツは8日、シュトゥットガルト・ウンテュルクハイム本社にバッテリーの研究開発ラボ「メルセデス・ベンツeCampus」を開設した。未来の電気自動車用(EV)セルとバッテリーを開発する最先端の開発拠点で、同社では「今後数年間でバッテリーコストを30%以上削減したい」(オラ・ケレニウス会長)考えだ。

開所式にはドイツ政府のロバート・ハベック経済大臣やバーデン=ヴュルテンベルク州のヴィンフリート・クレッチマン首相も出席した。オラ・ケレニウス会長は「メルセデス・ベンツeCampusの開設は、当社の持続可能な事業戦略における重要な一歩。今後数年間で、バッテリーのコストを30%以上削減する。また、eCampusを私たちの駆動システム研究開発センターの中心に置くことで、より持続可能な未来への明確なコミットメントを示すことになる」と述べた。

同社は今年、研究開発と工場建設に140億ユーロ(2兆4,400億円)を投じる計画だ。「eCampus」と名付けた新しい “産業用セルラボ “の開設で、同社はバッテリーのセル開発からプロセスチェーン全体をカバーした一気通貫の専門ノウハウを育成する意向だ。これにより、本社を置くシュトゥットガルト・ウンターテュルクハイムが同社駆動技術のハイテク拠点としての機能強化をめざすという。

新設備での操業開始は2段階に分けて行う予定で、うち約1万平方メートルの敷地に設けたバッテリーセル生産工場は、約2年の建設期間を経てこのほど操業を始めた。将来の電池世代を開発するために、年産数万個のセル生産が可能という。工業的な製造プロセスを習得するため、既存の2つのセルラボを補完する。” ケミストリーラボ”では、新しいセルケミストリーと先進的なセルデザインが開発・評価し、”フレキシブル・セル・ラボ”では新開発の自動車用パウチセルを製造しテストする。

最新鋭のテスト・実証センターの新棟を今年末までに竣工する。製品・プロセス開発のためのバッテリー立ち上げ工場を併設する。このため、同社のナーベルン工場のテストセンターをeCampusに移管する。敷地面積は約2万平方メートルで、バッテリーの安全性と耐用年数を総合的に試験・証明するための最新鋭のテストベンをが建設する計画だ。

メルセデス・ベンツは2039年までに、新車のライフサイクルにおいて純カーボンニュートラル化をめざしている。このため、一次資源を節約するための真の循環型経済の確立を重要視し、「循環型デザイン」「価値の保持」「ループの閉鎖」という3つの中核課題に焦点を当て、バッテリーに対する全体的なアプローチを追求している。同社では、eCampusの活動が「メルセデス・ベンツの循環型コンセプトの出発点となる」と位置付けている。

現在、同社のEV用バッテリー生産は、ブリュールとヘーデルフィンゲンの2つのウンターテュルクハイム工場を含め3大陸で展開している。また、すべてのEVのスペアパーツとして再生バッテリーを提供しており、子会社のメルセデス・ベンツ・エナジーを通じて大規模な定置用蓄電池事業も行っている。同社では今年、ドイツ南部のクッペンハイムにバッテリーのリサイクル工場が開設、循環型のバッテリーチェーンも拡充し取り組んでいる。

開所式で、ロベルト・ハーベック経済・気候行動大臣は「高性能バッテリーは、輸送の電動化の中核をなすものであり、自動車産業の変革を成功させる鍵。革新的で持続可能なバッテリーの需要は、今後数年間、欧州で急増し続けるだろう。そのため、ドイツと欧州が独自の能力を高め、特にこの重要な技術に関する専門知識を蓄積することは、極めて重要だ。これは産業立地を強化し、近代的で将来性のある雇用を創出するだけでなく、欧州の回復力を高めることにもなる。新しいeCampusによって、メルセデス・ベンツが将来的にウンターテュルクハイムの拠点でバッテリーの研究開発活動に注力することを嬉しく思います。これにより、バッテリー技術のさらなる発展と、ドイツにおける強力なバッテリー・エコシステムの確立に重要な貢献ができる」と述べ、eCampusの役割の重要性を指摘した。(2024年7月9日)