
トランプ米大統領によるカナダ・メキシコへの追加関税が4日発効した。2020年7月から始まった3カ国の貿易協定「新NAFTA」を米国が破棄した格好だ。これを受けて、カナダは米国製品に25%の関税をすぐさま導入し、メキシコも相応の対抗措置を講じるとしている。現地報道によると、GMとフォードモーター、ステランティスのデトロイト3は、今回の関税措置で数十億ドルの収益を失う、と指摘されている。トランプ大統領は4月から、その他の国からの輸入自動車にも25%程度の関税を課す方針を示しており、米国関税の影響に注目が集まっている。
サプライチェーンへの余波も広がりそう
トランプ大統領は、1月に中国からの輸入品に10%、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課した。カナダとメキシコには30日間の執行猶予を設け、中国製品にはさらに10%引き上げ、関税率を20%とし3月4日に発効した。
これを受けて、カナダは米国製品に対して25%の関税を導入。当初は総額300億ドル相当の製品を対象とし、21日後には1,550億ドル相当に対象品目を広げる方針だ。第二段階では、電気自動車(EV)もその対象になるという。中国もまた、報復関税で対応。2月初旬からは、米国からの石炭と液化天然ガスに15%の追加関税を課し、3月10日からは米国産の鶏肉、小麦、トウモロコシ、綿花に15%の追加関税を、一部の農産物に10%の追加課徴金を課すことを発表した。
米大統領「他国の自動車工場は閉鎖される」
カナダとメキシコの米国の隣国は、米国にとって最も重要な貿易パートナーだ。これら3カ国の輸入品を合わせると、米国の輸入全体の40%を占めているといわれているほどだ。
自動車産業においても、その影響は大きい。多くの自動車メーカーがメキシコやカナダで米国市場向けに車両生産しているからだ。GMはメキシコで年間84万台を、カナダで15万台を生産しており、フォルクスワーゲンもカナダのオンタリオ州でEV用バッテリーセル工場を建設する計画だ。同時にサプライチェーンへの影響は避けられそうにない。米商務省によると、2024年の米国への乗用車輸入総額は2,140億ドル、日本円で約32兆円に達するという。
トランプ大統領は、自動車を特定し4月から輸入車に対する25%前後の関税を課す方針を打ち出している。米国内での生産回帰を目的としており、トランプ大統領はメキシコなど「他国の自動車工場は閉鎖されるだろう」とさえ言い切った。しかし、それが自動車を標的にしたものなのか、他国との貿易全般を指してのことなのか、まだ分からない。
実際、4月から導入するとしている「相互関税」でいえば、例えば米国の輸入関税が2.5%なのに対し欧州は10%で、相互関税とすれば欧州からの輸入車は関税率が10%になる。欧米メディアも一斉に、トランプ関税に高い関心をもって伝えており、グローバルでサプライチェーンを抱える自動車産業界にとっても目が離せない状況だ。(2025年3月5日)