
フォードモーターは、トランプ政権による自動車関税政策で25億ドル(3,737億円)のコスト増を被り、通期のEBIT(利払い・税引前利益)で15億ドル(2,242億円)のマイナスにつながる、との見通しを明らかにした。5日に発表した2025年第1四半期(Q1)業績で通期の見通しのなかで示した。
Q1の営業利益は74%減と大幅減益
2025年Q1の営業収入は新車販売減が響き前年同期比5%減の406億5,900万ドル(6兆777億円)にとどまった。営業利益は同74%減の3億1,900万ドル(476億円)、純利益も同53.2%減の1億4,800万ドル(221億円)に大きく減った。
電気自動車部門「モデルe」の売り上げが10倍に
部門別では、内燃機関の乗用車事業「フォードブルー」の販売台数は同6.1%減の58万8千台で、営業収入は同3.5%減の209億9,700万ドル(3兆1,386億円)、EBITは同89.3%減の9,600万ドル(143億円)に沈んだ。販売減による減益が6億2,200万ドル(929億円)、為替が2億8,600万ドル(427億円)に及んだ。商用車事業の「フォードプロ」は同13.9%減の35万2千台の販売にとどまり、この販売減により営業収入は同15.8%減の151億8,100万ドル(2兆2,192億円)となった。EBITは同56%減の13億900万ドル(1,957億円)に半減した。一方、電気自動車事業の「モデルe」は販売台数が前年同期の3.1倍となる3万1千台に増えたことで、営業収入は同10.7倍の12億4,200万ドル(1,855億円)にまで拡大した。これにより、1億4,300万ドル(213億円)のコスト低減効果を得てEBITでは前年同期の13億2,700万ドルから8億4,900万ドルに大きく赤字幅を改善した。
トランプ関税でコスト増につながる可能性を指摘
同社はトランプ関税によるこのQ1での影響が2億ドル(299億円)だったことを明かすとともに、関税が「顧客と自動車業界に、重大な混乱、コスト増加、不確実性を引き起こす」と指摘。「今後後実施される関税は、これらの影響を悪化させる可能性がある」と指摘した。同時に、関税や中国のレアアース鉱物の輸出制限などでサプライチェーンが混乱すれば、「生産混乱のリスクを高め、コストをさらに増加させる可能性がある」とし懸念を示した。(2025年5月7日)*本文中の日本円への換算値は2025年3月31日の為替を用いている。関税の影響値など通期見通しでも、業績値との比較が分かりやすいように3月31日値で換算した。