アウディは15日、インゴルシュタット市とともに開発を進めてきたテクノロジーパーク「インカンパス」が正式にオープンした、と発表した。施設内で蓄熱や排出するエネルギーを循環利用するなど、環境面にも配慮した最新の設備を備える。18日にはアウディ最新の自動車衝突実験設備として「アウディ」車両安全センター(AFZ)も開所した。先行するVWグループのソフトウェア開発拠点と合わせてグループの技術開発の中核拠点として動き出した。
インカンパスは、アウディとインゴルシュタット市が製油所跡地15万平方メートルを共同で開発してきたテクノロジーパークで、ドイツ最大の地下浄化プロジェクトとして注目を集めている。4万2千平方メートルの敷地にインゴルシュタット工科大学が利用するほかVWのソフトウェア会社「CARIAD」も同社最大の技術拠点を設けている。アウディはパートナーとともに、未来のモビリティ開発に取り組む方針で、すでに開設しているITセンターとこのほど新たに車両安全センターを建設した。
AFZは、約1億ユーロ(157億円)を投じた最先端の衝突試験設備を持つ。建設には3年を要した。幅130メートル・全長260メートルの走行路のほか100トンの可動式衝突ブロック、2台の車両を90度の角度で衝突させる機能などを備えている。 約100人が従事し、あらゆるテストシナリオを試す。世界の各市場で異なる安全基準にも備えることができるとしている。アウディの技術開発担当メンバーのオリバー・ホフマン取締役は「今日のアウディのモデルは、世界的に有効な試験手順において、傑出した結果を達成しているがさらに開発とテストの能力を向上させ続けていく」と話す。
15日に行われたオープニング式典は、バイエルン州のマルクス・セーダー大臣やインゴルシュタットのクリスティアン・シャープフ市長のほか、アウディのゲルノット・デルナーCEO、CARIADのペーター・ボッシュCEOも出席し執り行われた。シャープフ市長は「製油所跡地では、イノベーションと未来が生み出され、それに伴い新たな革新的雇用が創出されている」と述べた。またアウディのゲルナーCEOは「モビリティの未来を切り開くために、インカンパスによって私たちは地域の価値創造を強化し、CARIADのようなパートナーとともに、モビリティの未来という私たちのビジョンのための具体的なソリューションに取り組むための前提条件を整えている」と語った。
AZFに近くには、新しいアウディITセンターも建設された。床面積は約1万平方メートルで、最先端のハードウェアとソフトウェアでの将来のプロジェクトを支える。2,400平方メートルの敷地に、約800台のサーバーとデータストレージが設置され、サーバーからの廃熱はインキャンパス全体のエネルギー供給ネットワークに活用する。当初約2メガワットの出力を4.4メガワットまで増やす予定で、ITセンターはエネルギーの消費地から発電地への機能を持つ。
また、インキャンパスには2020年末からCARIADがテックハブを開設し、2,000人以上のCARIAD社員がデジタルドライビングエクスペリエンス、自動運転、技術プラットフォーム、クラウドサービスの開発などに取り組んでいる。CARIADは新しいプレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)をベースに、アウディとポルシェのプレミアム・ソフトウェアとエレクトロニクス・アーキテクチャを開発しているのも特長だ。同時に、パートナー企業であるボッシュとの自動運転アライアンスもここで行われている。
2008年に製油所が閉鎖され、2016年秋から土壌と地下水の浄化が行われている。インキャンパス敷地内の地下水浄化は2028年まで続ける予定で、敷地端にある10本の井戸で地下水を汲み上げ処理する。インカンプス跡地の浄化は、ドイツ最大級の地盤浄化プロジェクトであり、バイエルン州では初の製油所跡地の完全浄化となる。