欧州委員会は6日、EU・英国貿易協力協定(TCA)に基づく電気自動車(BEV)のバッテリーに適用される原産地規則を2026年末まで3年間延長することを決めた。合わせて、欧州のバッテリー業界向けに最大30億ユーロ(約4,700億円)を支援することも欧州理事会に提案した。中国メーカーが台頭する英国のBEV市場での欧州勢の競争力を保つ狙い。欧州自動車工業会(ACEA)は同日、欧州委員会の提案を歓迎するコメントを発表した。
欧州委員会のTCAで適用するEV用バッテリーに関する今提案の柱は3つ。欧州域内でのバッテリー生産の促進を確認するとともに、バッテリーの原産地規則を3年間、2026年末まで一度限りで延長する。2027年以後は延長を認めないことを条件とした。同時に、EUの電池産業を活性化させるための具体的な財政的優遇措置を求めた。
TCAによるBEV用バッテリーの原産地規則は、EUのバッテリー競争力強化を推進するため2020年に策定された。2段階の原産地規則があり、2023年末までの第1段階では欧州で組み立てられたバッテリーの原産性を認めているが、第2段階となる2024年から2026年末までは特恵関税率(0%)が適用されず、完成車には10%の輸入関税が課されるというもの。欧州委員会によると、ロシアのウクライナ侵攻やCOVID-19によるサプライチェーンへの影響などがあり、欧州のバッテリー・エコシステムの拡大が当初の予想より遅れていると判断。欧州の自動車、電池、化学業界から懸念する声の高まりを受け、その見直しを図った格好だ。
この欧州委員会の見直し提案を受けて、 欧州自動車工業会(ACEA)は歓迎のコメントを発表。「EUのBEV生産が拡大し、世界的なBEV競争が進化する上で極めて重要な局面を迎えることになる」とし、理事会に本提案を承認するよう求めた。ACEAは今年9月、原産地規則を3年間延長するよう欧州委員会に要請していた。ACEAでは、会員企業を対象にした調査で原産地規則適用で関税賦課に伴う2024~2026年のコスト負担は計約43億ユーロに上り、約48万台のBEVの減産を余儀なくされる可能性がある、と指摘していた。