• 2024-11-06

メルセデス・ベンツ、欧州初のバッテリー・リサイクル工場を開設。年間5万個以上の再生可能に

メルセデス・ベンツのクッペンハイム・バッテリーリサイクル工場:機械的工程でプラスチック、銅、アルミニウム、鉄を複雑な多段階工程で選別

メルセデス・ベンツは21日、機械的・湿式冶金学的プロセスを統合した欧州初のバッテリーリサイクル工場を開設した。年間5万個以上を新しいバッテリーモジュール相当分の再生材生成工場となる。同社では、自社施設でバッテリーのリサイクルループを完結させる世界初の自動車メーカーとなる、という。

同工場はドイツ南部のクッペンハイムにオープンした。96%以上の回収率と純粋なCO₂ニュートラルな操業により、原材料の持続可能性を高めることができるという。同工場では、リチウム、ニッケル、コバルトなどの貴重で希少な原材料を回収することができ、将来のメルセデス・ベンツの電気自動車用バッテリー生産に使えるようになる。設備投資額は数千万ユーロになるという。同工場の処理能力は年間2,500トン。 回収された材料は、メルセデス・ベンツの電気自動車用に5万個以上のバッテリーモジュールに相当する。

同日行われた開所式には、オラフ・ショルツ首相のほかバーデン=ヴュルテンベルク州のテクラ・ウォーカー環境大臣が出席した。メルセデス・ベンツ・グループのオラ・カレヌス取締役会長は「私たちは最も魅力的な車をサステイナブルな方法で製造するという目標を掲げており、今回のヨーロッパ初の機械・湿式冶金法による統合型バッテリーリサイクル工場は、原材料の持続可能性を高めるための重要なマイルストーンとなる」と述べた。

シュルツ首相は「自動車の未来は電気であり、バッテリーはこれに欠かせない部品。 資源を節約し、持続可能な方法でバッテリーを生産するにはリサイクルも重要な要素で、循環型経済は成長の原動力であり、同時に気候変動対策目標を達成するための重要な要素だ」とあいさつし、同社の取り組みを評価した。

メルセデス・ベンツのバッテリーリサイクル工場には、ドイツのプラントおよび機械エンジニアリング企業のSMSグループとオーストラリアのプロセス技術開発企業Neometalsの合弁企業であるPrimobiusが技術協力している。また、政府の支援を受けてドイツの3つの大学とも学術研究プロジェクトを行っている。

同工場はヨーロッパで初めて、バッテリーモジュールの破砕から乾燥、活性バッテリー材料の処理までのすべての工程をカバーしているという。プラスチックや銅、アルミニウム、鉄を選別・分離した後、湿式冶金プロセスで、いわゆる「ブラックマテリアル」を処理する。コバルトやニッケル、リチウムなどの有価金属を化学工程で個別に抽出し、新しいバッテリーセル生産に再利用する。また、現在ヨーロッパで主流となっている乾式冶金法に対し、湿式冶金法はエネルギー消費と材料の無駄が少ないのが特長としている。(2024年10月21日)