
欧州自動車工業会(ACEA)は9日、ゼロエミッション車および商用車向け税制とインセンティブ制度の最新概要をまとめ公表した。これによると、欧州では電気自動車(EV)の購入・税制優遇制度がまだ十分ではない、としEVこ普及のためにさらなる施策が不可欠と訴えた。
EUの「自動車産業行動計画」に注文
ACEAのシグリッド・デ・ヴリース事務局長は「現在、自動車のEV市場シェアは約15%であり、これは今年末までに25%に達するという期待値にはまだ遠い」と指摘し、「需要を促進し、この共通の目標を達成するためインセンティブが必要だ」と訴えた。
ACEAの報告書では、EV技術は進化を続けており、市場には3万ユーロ以下の価格帯のモデルも増えている、とした。しかし、初期費用は多くの消費者にとって大きな障壁となっているとした。その主な理由として、バッテリー製造コストの高さをあげ、インセンティブがEV購入を決定する要因となっていると分析している。
こうした背景として、2023年末にドイツでEV購入のインセンティブが廃止されると、ドイツのBEV市場が大きく崩れたことを紹介。「市場が成熟する前に国が資金援助する制度が突然終了したため、EVの購入はほぼ3分の1に激減した」と指摘する。こうした動きは他の欧州市場でもみられ、一部の購入奨励策は徐々に廃止され、奨励策がないEU加盟国は昨年の6カ国から8カ国に増えている、とした。
とくに、トラックやバスなどの大型車両(HDV)向けの奨励策の提供はさらに重要とし、加盟国の3分の1以上が購入奨励策を提供していない状況に懸念を表明。さらに、HDVに適した公共充電ポイントがほとんど存在しておらず、インフラ整備へのインセンティブを提供している国はわずか12カ国にとどまっていると紹介した。
一方、欧州各国間の連携も求めた。中国を引き合いに出し、欧州での各国枠組みがばらばらであることを問題視した。具体的には、欧州大陸に30以上の異なる制度があるとし、「資金レベルや基準も異なっているため、欧州ではEVの普及に速度の差が生じている」という。ベルギーがその手厚い制度で高いEVシェアを示しているのに対し、中東欧諸国では制度が弱体だとした。
こうしたことが、欧州の自動車メーカーにとって今回のEUの「自動車産業行動計画」に需要喚起策のための新たな資金調達が盛り込まれていないことを懸念する点とした。このため、「欧州委員会は変革の重要な局面で必要とされている刺激を与えるものとして、この提案されたイニシアティブを早急に再検討すべきだ」と訴えた。(2025年4月9日)