
ルノーグループは1日、傘下のダチアブランドCEO(最高経営責任者)にメルセデス・ベンツで副社長やスマートブランドCEOを歴任したカトリン・アッド氏を起用した、と発表した。アッド氏は電動化戦略に豊富な実績を持っており。ダチアが次段階の成長戦略として「手頃な価格を維持しながら電動化を加速する」姿勢を鮮明にしたといえそうだ。
ダチアは「ローコストで信頼性の高い車」として欧州市場で確固たる地位を築いてきた。とくに「サンデロ」や「ダスター」などの主力モデルは堅調に販売を伸ばし、近年はCセグメントSUV「ビッグスター」の投入で市場シェアを拡大している。一方で、欧州連合(EU)の環境規制強化や電気自動車(EV)普及政策の加速により、同ブランドも本格的な電動化対応を迫られている。
「低価格電動車」という新たな課題
EV市場では、フォルクスワーゲン傘下のシュコダや中国系メーカーが「低価格EV」分野で攻勢を強めており、競争環境は急速に厳しさを増している。ダチアが強みとするコスト競争力を電動化時代にも維持できるかは、ルノーグループ全体にとっても戦略的に重要な試金石となる。今回のアッド氏の起用は、メルセデスでスマートの完全電動化を指揮した経験を生かし、「ダチア流の電動化」を軌道に乗せる狙いがある。
人材戦略と組織強化
アッド氏は販売・小売の現場経験に加え、組織改革や多様性推進にも実績を持つ。ダチアは急速な拡大を背景に、サプライチェーンの再編や人材確保といった課題にも直面しており、リーダーシップの刷新はブランド強化だけでなく組織的持続力を高める意味も持つ。
アッド氏は就任にあたり「社会的・技術的に転換点を迎える中、ダチアは誰もがアクセス可能なモビリティを体現する」と述べた。EV市場の本格普及が予測される2030年に向け、低価格セグメントにおける競争は激化必至。ルノーグループがダチアに託した新CEOの手腕が、欧州自動車市場の勢力図に影響を与える可能性もある。(2025年9月1日)