
欧州委員会は12日、ブリュッセルで第3回「欧州自動車産業の未来に関する戦略対話」を開き、脱炭素化と競争力強化を同時に進める方針を鮮明にした。欧州委員会は年内にも法人向け車両のゼロエミッション移行を加速させる法案を提示するほか、すでに立ち上げた「欧州自動運転・コネクテッドカー連合」を基盤に、自動運転などの取り組みを促す意向を強調した。
欧州委員会は、乗用車、軽商用車、大型車両の三分野すべてで電動化がゼロエミッション移行の主要な道筋であると強調。そのうえで、需要喚起策や安価で安定したエネルギー供給、充実した充電インフラの整備が成功の前提条件であると位置づけた。さらに、小型で効率的な電気自動車の生産や、普及率が8.5%にとどまるバン市場の支援にも重点を置く方針を示した。
トラックやバスの分野については、登録台数のうち電動車が3.5%に過ぎず、メガワット級充電や送電網容量、購入補助といった条件整備が遅れている現状を課題として認識しており、欧州委員会では「排出削減が最も困難なこの分野での進展を急ぐ必要がある」とし、業界とのフォローアップ協議を通じて短期的かつ特化した対策を進める考えを示した。
さらに、欧州委員会は主要ステークホルダーとともにイノベーションプログラム間の相乗効果を高める覚書に署名。自動車研究・イノベーション共同事業体の設立意向を確認し、企業が初期段階から参画することの重要性を明確にした。
欧州自動車工業会(ACEA)は同日声明を発表し、「大型車両のCO2基準見直しを2027年まで待つ余裕はない」と指摘し、欧州委員会に今後数カ月で具体策を提示するよう求めた。
欧州委員会と自動車産業界は今年1月に、フォン・デア・ライエン委員長の提唱で「戦略対話」を始めている。自動車産業行動計画を策定し、持続可能な自動車産業に向けた具体的な戦略を産業界とともに探る方針だ。なかでも、欧州委員会が重視するグリーンモビリティ移行への移行支援と、新たな事業領域と目される自動運転やコネクテッドカーなどイノベーション分野での世界をリードする取り組みを狙っている。(2025年9月12日)