• 2025-12-17

フォード、成長戦略を転換。 トラックとハイブリッド重視へ

米フォードモーターは15日、成長戦略「Ford+」を再構築し電動化投資の軸足を見直す、と発表した。需要が堅調なトラックや商用車、ハイブリッド車に経営資源を再配分するとともに、電池エネルギー貯蔵システム(BESS)事業へ新規参入する。収益性を重視した資本配分により、持続的な成長を目指す。

フォードは2030年までに、ハイブリッド車や航続距離延長型EV(EREV)、純電気自動車(EV)を合わせた電動車の販売比率を約5割に引き上げる計画だ。現在の約17%から大幅に高める一方、北米では低コストで柔軟性の高い「ユニバーサルEVプラットフォーム」に開発を集中し、小型・量販EVに注力する。

EV戦略の見直しに伴い、次世代「F-150ライトニング」はEREV方式へ転換し、ミシガン州ディアボーンで生産する。需要低迷やコスト上昇を背景に、一部の大型EV計画は中止または変更する。生産体制では、米国内工場を再編する。テネシー州ブルーオーバル・シティでは電動車計画を改め、新たなガソリン車中心のトラック生産拠点とする。オハイオ州工場では、商用向けのガソリン・ハイブリッドバンを生産し、フォード・プロ事業の中核と位置付ける。これに伴い、米国内で数千人規模の新規雇用を創出する。

新たな成長分野として打ち出したのが、電池エネルギー貯蔵事業だ。ケンタッキー州などの既存電池工場を活用し、データセンターや電力インフラ向けにBESSを供給する。2027年までに年20ギガワット時規模の供給体制を構築する計画で、今後2年間に約20億ドルを投資する。

一連の戦略転換に伴い、フォードはEV関連資産の整理などで約195億ドルの特別損失を計上する見通しだ。現金支出は約55億ドルで、主に2026年以降に発生する。一方、基盤事業の底堅さを背景に、2025年の調整後EBIT(利払い・税引き前利益)見通しを約70億ドルへ引き上げた。

ファーリー最高経営責任者(CEO)は「顧客需要に基づき、高収益分野へ資本を振り向ける。より強靱で収益性の高いフォードを築く」と述べた。電動化一辺倒から柔軟路線へ転じたフォードの戦略は、自動車業界全体の投資判断にも影響を与えそうだ。(2025年12月15日)