
アウディは27日、生産・物流分野で人工知能(AI)の本格展開を進めると発表した。工場内の生産システムを従来の固定型コンピューターから大規模クラウド基盤へ移行し、AIを前提とした量産体制を構築する。効率性向上と品質確保を両立させ、将来の「スマートファクトリー」像を明確に打ち出した。
生産・物流担当取締役の ゲルド・ワーカー氏は「AIは生産効率における量子的飛躍だ。AIとデジタル化のロードマップにより、AIが従業員のパートナーとして最適な支援を提供する工場へと変革している」と述べた。人間工学的に負担の大きい作業をAI制御ロボットが担い、チャットボットが現場を補完する体制がすでに動き始めているという。
クラウド制御が基盤に
中核となるのが「Edge Cloud 4 Production(EC4P)」だ。従来の自動化技術とクラウドの計算能力を融合し、工場全体をネットワーク化する。これにより現場のハードウエアを削減し、機能追加を迅速化。安定稼働、保守コスト削減、ITセキュリティ強化につなげる。独国内の組立工程では、作業指示をクラウドからリアルタイム配信する仕組みに移行し、1,000台超の産業用PCが不要になった。
ネッカーズルム工場では、A5・A6向けボディー生産でEC4Pを量産ラインに初導入。仮想PLC(vPLC)がローカル制御機器を置き換え、約100台のロボットがミリ秒単位で連携する。1日数百台を3交代で生産する体制は、業界でも先進的と位置づける。
AIは品質確保にも活用される。溶接スパッタを検知する「Weld Splatter Detection(WSD)」は、将来EC4P上で稼働し、検知後の研磨作業をロボットが担う。フォルクスワーゲングループ初のAI支援型溶接検査として、インゴルシュタットの6工場で量産導入を予定する。
さらに、独自開発の「ProcessGuardAIn」は機械・センサー情報を基に工程をリアルタイム監視し、異常を早期検知する。ネッカーズルム塗装工程での実証を経て、2026年第2四半期の量産展開を計画。将来は予知保全や品質保証の中核ツールとする構想だ。
外部連携と人材
アウディは社内の生産ラボに加え、欧州の応用AI拠点 IPAI Heilbronn など外部機関とも連携する。塗装乾燥工程ではAIによるエネルギー最適化を検証中で、2026年夏までに省エネ効果を測定する。クラウド、ネットワーク、自動化技術ではシーメンスなどとの協業も進む。同社はAI活用に関する行動規範とデータ共有指針を整備し、責任ある利用を掲げる。AIを競争力の源泉と位置づけつつ、欧州製造業のデジタル転換を主導する構えだ。(2026年1月29日)