
トランプ米政権は12日、自動車の温室効果ガス(GHG)排出規制を大幅に見直す最終規則を公表した。2009年の温室効果ガス「危険認定」を撤廃し、車両排出基準や関連コンプライアンス制度を見直す内容で、米国の自動車環境政策は大きな転換点を迎えた。政権側は規制見直しにより約1.3兆ドルのコスト削減効果を見込むとしており、車両価格やメーカーの投資戦略への影響が注目される。
米環境保護庁、排出基準見直しへ アイドリングストップも
米国では1970年の大気浄化法改正以降、排ガス規制は段階的に強化されてきた。とくに2009年のGHG危険認定以降はCO₂排出削減が政策の柱となり、燃費規制強化や電動車普及政策の法的基盤となっていた。バイデン前政権はEV販売拡大を軸に脱炭素政策を推進していた経緯があり、今回の決定はその流れを大きく転換するものとなる。
自動車業界では規制負担軽減による車両価格抑制への期待がある一方、欧州や中国では電動化規制が継続しており、グローバルメーカーの電動化投資が大きく後退する可能性は限定的との見方も多い。地域ごとの規制差拡大に伴う開発コスト増やサプライチェーン再構築も課題となりそうだ。
カリフォルニア州が先導してきた排ガス政策
米国の自動車排ガス規制は、カリフォルニア州が先導してきた側面が大きい。同州は深刻な大気汚染対策を背景に独自の厳格な排出基準を導入し、連邦政府から特例承認(waiver)を受ける形で全国規制の方向性にも影響を与えてきた。ゼロエミッション車(ZEV)規制など電動化政策も同州が主導し、他州が追随する構図が形成されてきた。結果として米国市場では「カリフォルニア基準」が事実上の全国標準として機能する場面も少なくなかった。
連邦・州対立、次期大統領選の争点に
今回の連邦政府による規制緩和は、民主党主導のカリフォルニア州との政策対立を一段と鮮明にする可能性がある。同州知事は民主党の有力な次期大統領候補と目されており、環境政策は次期大統領選の主要争点となる公算が大きい。共和党政権はエネルギー価格や産業競争力を重視して規制緩和を進める一方、民主党は脱炭素政策を成長戦略と位置付けており、環境政策を巡る党派対立は自動車産業にも直接影響する構図が続く見通しだ。自動車メーカーにとっては、連邦と州の規制方向の違いを踏まえた複線的な商品・投資戦略が求められる局面となりそうだ。(2026年2月13日)