欧州自動車工業会(ACEA)は14日、 欧州の電気自動車(EV)生産がの競争力が損なわれる危機にある、と警告する報告書を発表した。中国がBEVのライフサイクル全体で総合的な政策を実行しているほか、米国も国内自動車メーカーに対するEV奨励策を強化しており、これに対して欧州の産業戦略が弱いため国際競争力を確保できないと指摘。「首尾一貫した強化策が不可欠だ」と訴えている。
ACEAの報告書は、EUがEVのサプライチェーンを発展させる上で、膨大な規模の課題を抱えていることを明らかにしながら、中国や米国では自国産業を後押しする産業戦略を打ち出しており、欧州でのEV競争力は「損なわれる危機に瀕している」と警告した。なかでも、中国は電気自動車のライフサイクル全体にわたって「採掘、精製、製造、充電ネットワーク、安価なエネルギー、購入インセンティブ、リサイクルを包括する戦略的かつ総合的な政策をとっており、競争力を大幅に強化している」とし、欧州ではこれとは対照的に「産業政策が断片的な規制アプローチを採用している」とバリューチェーンを阻害する規制に言及した。
また、米国ではEVバリューチェーンの製造拠点設立に向けての機運が高まっていることを示し、「インフレ削減法(IRA)の下での前例のない資金調達」などで国内自動車産業を後押ししているとした。これが、欧州車メーカーにとって最も貴重な輸出市場といえる米国での競争力を圧迫している、という。
さらに、報告書では欧州における電池セル生産の進展が強調しながらも、「川上の電池バリューチェーンの開発は需要に追いついておらず、中国への依存が続いている」と指摘した。欧州委員会でのEVのEU-英国原産地規則を延長するという動きを取り上げ、EUにとって不利益となる規制を批判した。