欧州委員会(EC)と欧州議会、理事会は18日、2040年に大型車のCO2排出量削減目標を2019年比で90%とする、新たな規制案で合意した。2030年からの発売する新車が対象で、トレーラーも具体的な排出基準を設定する。2月の欧州議会で正式決定する。これを受けて、欧州自動車工業会(ACEA)と欧州自動車部品工業会(CLEPA)はコメントを発表し、掲げる脱炭素化を支持しながらも「合意された実施スケジュールは、それを可能にする重要な条件が整っていないため極めて困難」(ACEA)など、その進め方の見直しを求めた。
欧州業界は反発、見直し求める
新たに合意したCO2排出量削減目標は、2019年比で2030~2034年に45%、2035~2039年に65%、2040年には90%とした。その範囲も拡大され、ほぼすべてのトラックと都市バス、長距離バス、トレーラ0に適用する。2035年時点ではトラックのうちゴミ収集車やティッパー、コンクリートミキサー車などを含め、トレーラとセミトレーラについても2030年から具体的な排出削減目標を設定する。今回の新基準の効果と影響をみながら2027年までに小型貨物車への適用範囲の拡大や合成燃料について具体的な排出量削減への取り組み修正も行うとした。
ECは「本日の合意は、革新的なゼロ・エミッション技術への投資に舵を切り、充電・給油インフラの展開を促進するようメーカー、運輸事業者、利用者に新たな明確なシグナルを送るものだ」とし、欧州での気候変動対策を加速させるものと位置づけている。ECは昨年2月、2050年までに大型車のCO2排出量を実質上ゼロとする目標を掲げ2030年以降の規制案を提案した。
この3者合意を受けて、ACEAのシグリッド・デ・ブリース事務局長は「ゼロ・エミッション・モデルの需要を支える枠組みがなければ、特に想定されるスケジュールでは目標達成は不可能だ」と反発した。ACEAはECが示す新基準の目標達成には「2030年までに40万台以上のBEVと水素自動車を走らせ、新規登録の少なくとも3分の1をゼロ・エミッション車にしなければならない。ヨーロッパで少なくとも5万カ所の充電ステーションと700カ所の水素充填ステーションが必要だ」とも指摘した。
一方、CLEPAもコメントを出し、ベンジャミン・クリーガー事務局長は「水素エンジンやEVトレーラーが盛り込まれ前向きな動きといえるが、e-モビリティを補完する再生可能燃料の役割についてはまだ明確に定義する必要がある」と述べ、2030年までにCO2を45%削減するためには「40万台以上のゼロ・エミッション・トラックが道路を走る必要があり現在、新規登録されたトラックのうち電気自動車は1%未満で、それを可能にする条件の多くが欠けている」と指摘した。(2024年1月19日)