欧州委員会(EC)は12日、中国製の電気自動車(BEV)に7月4日から最大38.1%の追加関税を課すことを決めた。中国政府の補助金でEU域内メーカーの価格競争力が歪められたとしての措置。米バイデン政権も中国のBEVを対象に輸入関税を25%から100%に引き上げる方針を示しており、中国との間でBEVを巡る経済闘争は一段と熱を帯びそうだ。欧州の自動車業界も同日、このECの発表に反応。欧州自動車部品工業会(CLEPA)のベンジャミン・クリーガー事務局長は「世界貿易には公平な競争条件が必要だが、保護主義が欧州の競争力を回復させる答えになることはない」と指摘した。一方、欧州自動車工業会(ACEA)は「暫定的な相殺関税を課すことを決定したことに留意する」と論評を避けた。
BYDは17.4%、吉利汽車20%、上海汽車38.1%
ECは昨年10月、中国製BEVの反補助金調査を開始。今回、その調査結果の一部を発表し、「不当な補助金の恩恵を受けており、それがEUのBEV生産者に経済的損害の脅威をもたらしている」と断定した。これに伴い、ECは中国当局との協議に入るとともにWTO(世界貿易機構)を含めた是正措置についての協議を進めているとしている。
この間、ECは中国製BEVの輸入に対して暫定的な相殺関税を課すことを決め、中国車メーカーごとに個別関税を課す方針だ。BYDは17.4%、吉利汽車20%、上海汽車38.1%とし、7月4日から実施する。その他の中国車メーカーについては、サンプリング調査への協力可否によって関税率を変える。
CLEPA「報復のリスク」と懸念表明
このECの決定を受け、欧州の自動車業界も一斉に反応した。CLEPAのベンジャミン・クリーガー事務局長は「欧州委員会が、製造業のハブとしてのEUの競争力と中国メーカーがもたらす課題について懸念するのは正しいが、関税は一時的な休息にしかならず、報復のリスクを負うことになる」と指摘し、「保護主義が欧州の競争力を回復させる答えになることはない」と、懸念を表明した。CLEPAでは、世界の自動車市場の3分の1を占める中国市場での欧州サプライヤーへの余波を不安視している。
ACEAは、ECの決定に「留意する」と評価を避けた。同時に、「ACEAは一貫して、自由で公正な貿易は、世界的に競争力のある欧州の自動車産業を創出する上で不可欠であり、健全な競争は消費者の革新と選択肢を促進するものであると主張してきた」と述べ、今後の動向を注視する姿勢を示した。(2024年6月12日)