フォルクスワーゲン(VW)は11日、バッテリー子会社の「PowerCo(パワーコー)」社が米電池ベンチャーの「QuantumScape(クォンタムスケープ)」の全固体電池を量産化することで合意した、と発表した。かつてVWがクォンタム社と計画していた合弁事業を引き継いだ格好。VWは年間40GWhから最大80GWhの電池生産を見込む。全固体電池を巡ってはトヨタ自動車が出光興産と組んで2027~2028年頃の実用化をめざすなど、その事業化計画が相次いでいる。VWが他社に先駆け本格的な量産体制を整えることで電気自動車(BEV)の競争力を一気に高めることになりそうだ。
年間最大80GWh生産も視野
パワーコーとクォンタムスケープは、クォンタムの次世代固体リチウムメタル電池技術をパワーコーに供与し、パワーコーが量産化する契約を締結した。クォンタムは、全固体リチウムメタル電池が「技術的に十分な進捗がある」とし、電池セルを量産するライセンスをパワーコーに供与する。これにより、パワーコーは年間最大40GWhの電池を生産することができる。オプション契約として、その規模を年間最大80GWhまで拡張できるという。両者の合意は、2021年にVWがクォンタム社に1億ドル(当時109億円)を追加出資し車載用セルをパイロット生産する契約だったのを引き継ぐもの。
パワーコー、欧州と北米での生産体制拡充へ
クォンタム社の全固体リチウムメタル電池は、同社独自の固体セラミックセパレーターをベースとし、純粋なリチウム金属負極の使用を可能にしたもの。これにより出力密度を高め、急速充電に対応し安全で革新的な技術として注目を集めている。
パワーコーのフランク・ブローム最高経営責任者(CEO)は「私たちは何年も前からクォンタム社のプロトタイプセルを共同でテストしており、この未来の技術を量産に持ち込むきわめて重要な段階に入る」と述べた。クォンタム社のシヴァ・シヴァラム社長は、「今回の合意は、わが社の固体リチウム金属電池技術を市場に投入するための長期的な世界規模拡大戦略における大きな一歩だ」と指摘し、パワーコーが量産化に向けた同社の最初の顧客となることを歓迎した。
パワーコー社は2022年6月にVWが設立したバッテリー子会社で、2024年にも操業開始を予定している。欧州で6工場展開するほか、北米での現地生産の可能性を示唆していた。今回、クォルコム社との提携で北米での現地生産にもメドが立った格好だ。(2024年7月12日)