ステランティスは28日、アメリカズ地域最高執行責任者(COO)を務めるアントニオ・フィローサ氏(51)が最高経営責任者(CEO)に就任する、と発表した。6月23日付け。カルロス・タバレス前CEOが昨年末に突如辞任して半年間、同社トップは不在だった。急激な不振に陥った業績やタバレス前CEOの辞任にもつながったとされるディーラー、労組などとの対立解消に向け、在籍25年の生え抜きに立て直しを託すことになる。

CEO空席半年。立て直しに期待感
同社取締役会は、昨年末のタバレス氏辞任後、取締役会特別委員会(委員長=ジョン・エルカン執行役会長)が社内外で人選を行い推挙したフィローサ氏を次期CEOに選任した。近く臨時株主総会を開き、フィローサ氏を執行役に選ぶ。ジョン・エルカン執行会長は続投する。
6月23日付。エルカン執行会長は続投
同社によると、取締役会はフィローサ氏をCEOに選任した理由として「自動車業界での25年を超えるキャリアにおける実践的な成功実績、世界規模での経験の深さと広さ、同社に対する比類ない知識、認められたリーダーシップ能力」を挙げている。
ナポリ出身の51歳。ジープ躍進の立役者
アントニオ・フィローサ氏はイタリア・ナポリ出身で、ミラノ工科大学で工学修士号を取得、その後ブラジルのドム・カブラル財団で経営学の経営学修士号(MBA)を取得した。1999年にフィアットグループに入社、ベティム工場(ブラジル)の工場長やラテンアメリカ地域調達責任者などを歴任。2016年からアルゼンチン代表を務め、2018年にはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のラテンアメリカ地域COOに就任。2021年に誕生したステランティスの南米COOに任命され、2023年にジープブランドCEOに就任。2024年10月に北米COO、2024年12月に北米と南米の両地域のCOOとなった。南米勤務時代に、南米最大級の自動車拠点であるペルナンブコ工場の設立に携わり、ブラジルでのジープ事業強化に取り組み、ジープブランドとして米国以外でブラジルを最大市場に育てた功績で名をあげた。
フィローサ氏は「この素晴らしい会社のCEOに任命されたことは、私にとって大きな栄誉」と述べ、「当社は、自動車史上最も著名なブランドを擁し、100年を超えるイノベーションの伝統を持っている。この遺産と、顧客が愛する製品とサービスを提供し続けるという私たちの揺るぎない決意が、今後も当社の成功の鍵になる」と決意を示した。(2025年5月28日)