
メルセデス・ベンツは24日、スペイン北部のビトリア工場で新型全電動バン「VLE」のプレシリーズ生産を開始した、と発表した。2026年前半の世界初公開と量産をめざす。
「VLE」は新開発のモジュラー・スケーラブルバン・アーキテクチャ(VAN.EA)を採用する初のモデル。メルセデス・ベンツ・バンズ部門責任者のトーマス・クライン氏は「コンセプト段階から生産成熟まで記録的な速さで進展した。革新的なデジタル手法の導入で効率性を大幅に高めた」と強調した。
電動車もICEを混合生産
ビトリア工場では現在、建設工事の9割以上が完了しており、新設のボディショップや柔軟な塗装ラインを含め大規模な近代化を実施。約5,000人の従業員は160を超える研修プログラムを受け、新技術や新素材、IT基準への対応力を高めている。2026年以降はVLEに加え、VクラスやVito、eVitoも同一ラインで生産可能となり、電動車から内燃エンジン車まで柔軟に対応できる体制が整う。
持続可能性も重視しており、工場は2013年以降再生可能電力を100%調達。加えて太陽光発電や地熱利用、廃熱回収を導入し、ネットカーボンニュートラル生産を実現している。AIやデジタルツインといった最新技術も生産準備に活用された。
ベルント・クロットマイヤー工場長は「VLE生産を担う初の拠点として、新時代のバン製造の基準を築く」と語る。新型VLEは最大8席を備え、リムジンの走行性能とMPVの多用途性を兼ね備える設計で、家族利用から高級シャトル需要まで幅広く対応する。
1954年に稼働を開始したビトリア工場は、2024年に70周年を迎えた。約87万平方メートルの敷地を持つ同拠点は、メルセデス・ベンツの欧州における中核生産拠点として、電動化戦略の中で重要な役割を果たす。(2025年9月24日)