
欧州自動車工業会(ACEA)は2日、欧州自動車産業の変革を支える新たなデータプラットフォームとして「ACEA:intelligence」を立ち上げた、と発表した。電動化や貿易構造の変化、安全や雇用など多岐にわたる課題に対応する狙い。ACEAでは信頼性の高い統合データを国際的に提供するデジタル企業として運営し、業界統合の情報基盤としたい考えだ。
デジタル時代に対応した「信頼できる統計基盤」に
従来、ACEAは新車登録統計や「Automobile Industry Pocket Guide」などを通じ、業界の標準的なリファレンスデータを提供してきた。今回の新会社は、その実績を拡張し、対話型のダッシュボードやカスタマイズ可能なフィルターを備えたデジタル体験を通じ、複雑な統計を直感的に扱える仕組みを整える。
ACEAのシグリッド・デ・フリース事務局長は「電動化や規制対応など業界の変化は急速だ。確かなエビデンスなしに意思決定はできない」と述べ、独立運営される同社が「業界唯一の一次集計データ源」としての役割を強調した。
提供されるデータは、乗用車・商用車の登録台数、電動化の進展、貿易、雇用、安全、排出量や資源消費など、自動車産業の全体像を360度カバー。既成のデータセットに加え、オーダーメイドの調査やファクトブックも用意される。企業や投資家には市場動向の把握や戦略策定、研究者や政策立案者には制度設計や予測の根拠資料としての活用が期待される。
ACEAによれば、自動車産業はEU GDPの7.5%以上を生み、約1,320万人の雇用を支える基幹分野だ。年間の研究開発費は728億ユーロとEU全体の3分の1を占め、貿易黒字は1,067億ユーロに達する。こうした巨大産業の変革を、ACEA:intelligenceがデータ面で支えていくことになる。
新会社のアレクサンドル・プロヴォスト総支配人は「産業界、サービス事業者、政策担当者が変化の只中で明確な判断を下せるよう、複雑な統計を数クリックで行動可能な知見に変える」と述べた。(2025年10月2日)