
フォルクスワーゲン(VW)グループは30日、2025年第3四半期(7〜9月)と1〜9月期の連結決算を発表した。世界的な景気減速と米国の高関税が響き、営業利益は前年同期比58%減の54億ユーロ(9,627億円)にとどまり、営業利益率は2.3%に低下した。売上高は欧州市場での電動化モデルの好調が支えに、2,386億ユーロ(42兆5,376億円)とわずかに増加した。通期見通しは据え置いた。
関税負担とポルシェ関連損失で減益
米国の輸入関税や製品構成の変化に加え、ポルシェの製品戦略見直しやのれん減損などで特別損失75億ユーロ(1兆3,371億円)を計上。これを除く営業利益率は5.4%を確保したが、採算悪化が全体を押し下げた。アルノ・アントリッツCFOは「通商環境の逆風が年間で最大50億ユーロ(8,914億円)の打撃となる」と述べ、効率化とグループ内シナジーの徹底を掲げた。
ブランド別ではVW乗用車やシュコダを中心とするコアブランド群が営業利益7%増の47億ユーロ、利益率4.4%と堅調だった。一方、ポルシェを含むスポーツラグジュアリー群は中国市場の低迷と構造改革費用で営業赤字に転落した。アウディなどの「プログレッシブ」ブランド群も26%の減益となった。
欧州でEV需要堅調、通期見通しは維持
販売台数は前年同期比1.2%増の660万台。南米や欧州の伸びが中国と北米の落ち込みを補った。欧州では電気自動車(BEV)の受注が64%増え、全体の約22%を占めた。VWは「欧州で販売される電動車の4台に1台がグループ製」と強調する。
通期業績見通しは据え置き、売上高は「前年並み」、営業利益率は2〜3%とした。自動車部門の投資比率は12〜13%、年末の純流動性は約300億ユーロ(5兆3,484億円)を見込む。VWは2027年までに投資比率を10%程度に引き下げ、電動化とデジタル分野への重点投資を継続する方針だ。(2025年10月30日)