
フォルクスワーゲン(VW)傘下で商用車を手がけるトレイトンは3日、欧州投資銀行(EIB)と総額5億ユーロの融資契約を結んだ、と発表した。長期・優遇条件で提供される資金を、グループ横断の車両開発基盤「TRATON Modular System(TMS)」の研究開発に充てる。電動化や環境規制強化が進むなか、車両の標準化と開発効率向上を通じて競争力の強化を図る狙いだ。
TMSはスカニア、MANなど傘下ブランドで共通利用するモジュール式の開発・生産プラットフォーム。標準化したインターフェースを採用することで、規模の経済を生み、部品コストや開発負担を削減できるほか、顧客ごとの仕様にも柔軟に対応しやすくなる。グローバル展開を見据えた生産体系の統一にもつながるという。
今回の融資は、欧州グリーンディールが掲げる「運輸分野の脱炭素」政策の一環で、商用車の大型EV化やCO₂削減目標の達成を後押しする狙いがある。
TRATONのマイケル・ヤックシュタインCFO兼CHROは「EIBとの協力は当社の財務戦略における重要な節目だ。資金調達手段の多様化により、電動化と産業変革に必要な投資余力を確保する」と述べ、電動化時代に向けた研究開発の加速に意欲を示した。
EIBのニコラ・ベア副総裁は「持続可能なモビリティとデジタル化への投資は欧州競争力の基盤だ。TRATONの取り組みは雇用創出や供給網強化にも寄与し、欧州の産業基盤を将来世代へつなぐ」とコメントした。
欧州の商用車産業は、電動化・デジタル化・サプライチェーン再編が同時進行する過渡期にある。車両の共通基盤づくりに向けた今回の資金投入は、TRATONが電動大型車シフトを進めるうえで重要な一手となりそうだ。(2025年12月3日)