• 2025-10-01

フォード、全国フォーラムで基幹経済の生産性格差是正求める

写真はTIME誌から。

米フォードモーターは9月30日、デトロイトに政府や産業界のリーダー約300人を集め全国フォーラムを開催した。ジム・ファーリー社長は製造業における生産性格差に言及、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン氏らが熟練技術者の不足に警鐘を鳴らした。

同フォーラムでは、労働力不足、規制手続きの複雑さ、イノベーションの偏在といった成長阻害要因に焦点を当てる議論が交わされた。フォードのファーリー社長は「生産性の格差拡大は国家的課題であり、企業・政府・技術の連携が不可欠だ」と強調。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン氏やディア&カンパニーのジョン・メイ氏らも、官僚主義や熟練技能職不足への危機感を訴えた。

フォードはアスペン研究所と共同で、①人材資本の強化②規制効率化③必要分野でのイノベーション促進の三本柱を提示。これを具体化するため、UAWとの見習い制度や自動車技術者育成プログラムを拡大し、フォード・フィランソロピーとともに2025~26年度に総額500万ドル超を投じる新たな人材投資を行う考えを表明。これには、10万人以上の学生・教育者が対象で、技能教育ラボ設置や奨学金創設などが含まれるという。

金融市場では、こうした投資は短期的には費用増要因となる一方、熟練労働力の確保や規制簡素化に向けたロビー活動を伴うことで、フォードの長期的な収益性と競争力向上に寄与するとの見方がある。米国の電動化・インフラ投資加速と連動すれば、商用車部門「フォード・プロ」の需要拡大にも直結しうる。投資家の間では、同社が基幹経済の生産性改善を通じて安定的なキャッシュフローを確保できるかが、今後の株価評価に影響するとの見解が広がっている。

今回のサミットは、フォードが従来の自動車メーカーの枠を超え、米国経済全体の再生に関与する姿勢を示すものとなった。市場は、新戦略がどの程度実効性を持ち、同社の財務基盤と株主価値に反映されるかを注視している。(2025年9月30日)