
ゼネラル・モーターズ(GM)は21日、2025年第3四半期(7~9月)の決算を発表した。売上高は前年同期比0.3%減の485億9,000万ドル(7兆1,913億円)で、純利益は13億2,700万ドル(1,964億円)と56.6%の大幅減益となった。調整後営業利益(EBITベース)は33億7,600万ドル(4,996億円)で、前年の41億ドルから18%減少した。減益の主因は、電動化および自動運転事業の戦略的再編に伴う一時的な費用負担であるが、北米販売の鈍化にもかかわらず通期見通しは上方修正された。
主力の北米事業(GMNA)は、販売台数が84万台と前年から約6万台減り、EBITは25億600万ドル(3,708億円)と37%減益にとどまった。利益率も9.7%から6.2%へと低下した。一方、国際部門(GMI)は2億2,600万ドルの黒字を確保し、前年同期の4,200万ドルから大幅に改善した。中国の合弁事業も持分利益が8,000万ドルの黒字と、前年の赤字から回復した。金融子会社GMファイナンシャルは8億400万ドルの利益を計上し、17%の増益で全体の収益を下支えした。
この期には、電動車(EV)事業の生産能力を見直す「EV戦略再編費用」15億9,200万ドル(2,356億円)を特別損失として計上したほか、自動運転開発部門「クルーズ」の構造改革費用2,500万ドル、OnStarスマートドライバー機能を巡る訴訟対応費3億ドルなどが一時費用として発生した。さらに中国事業のリストラクチャリングや本社移転関連費用も含まれ、計19億ドル超の調整項目が営業利益を押し下げた。
それでもGMは通期(2025年12月期)の業績見通しを上方修正した。純利益は77億~83億ドル(1兆1,396~1兆2,284億円)、EBIT調整後は120億~130億ドル(1兆7,760~1兆9,240億円)へ引き上げ、従来予想の上限を超えた。調整後1株利益は9.75~10.50ドルとし、フリーキャッシュフローも100億~110億ドルへと拡大する見通しを示した。北米の利益率は縮小したが、コスト構造の改善と金融事業の収益増が奏功し、資金創出力は想定を上回る水準を維持している。
販売面では、世界全体の総販売台数が前年同期比約6万台減の156万台にとどまった。米国市場ではシェアが17.0%と前年の16.5%からわずかに上昇し、クロスオーバーや大型トラックの堅調な需要が寄与した。中国市場ではシェアが6.8%と前年の6.5%から改善し、五菱や上汽GMなどの合弁ブランドの回復が進んでいる。国際全体での販売シェアは8.3%と、前年より0.2ポイント上昇した。
メアリー・バーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は同日付の株主向け書簡で、「EV市場の成長ペースに合わせて投資の最適化と利益率改善を両立させる」と述べた。自動運転部門については、「クルーズとGM本体の技術開発を統合し、より効率的な体制で次世代の運転支援技術を加速させる」と強調した。
今回の決算は、電動化や自動運転という将来投資に伴うコスト負担が表面化した一方で、GMの資金創出力と財務体質の底堅さを改めて示す内容となった。北米市場の収益減を国際事業と金融部門が補い、通期では堅調なフリーキャッシュフローを確保する構図が鮮明である。GMはEVシフトの現実的な再設計を進めつつ、利益体質の強化と株主還元の両立を模索している。(2025年10月22日)