フォルクスワーゲン(VW)は18日、同社バッテリーメーカーのPowerCoとカナダのリチウム採掘会社「パトリオット・バッテリー・メタルズ」に4,800万米ドル(約74億円)を出資し、リチウム原材料の長期供給を確保する戦略的提携を結んだ、と発表した。VWグループがリチウムのサプライチェーンに投資するのは初めて。パワーコは加セント・トーマスにある同社最大のギガファクトリーで最大90GWhの生産を計画しており、今回の提携で高まるEV需要にリチウムバッテリー供給力を安定的に高めることになりそうだ。
加パトリオット・バッテリー・メタルズの9.9%を4800万ドルで取得
VWグループはパトリオット社の発行済み普通株式の9.9%を取得した。同時に、加ケベック州にある同社シャーキチュワアナン・プロジェクトから、10年間にわたって年間10万トンのスポジュメン精鉱を供給する販売契約を締結した。同プロジェクトは、南北アメリカ大陸最大のリチウム長石鉱床のひとつ。今後、加セント・トーマスにあるパトリオット社の電池工場をはじめ、欧州と北米にあるパワーコの電池工場に原材料を供給する。
リチウム含有鉱物は、バッテリー用リチウム化学物質の生産に不可欠といわれており、VWは今回の販売契約でパワーコでのバッテリーセル生産を強化できるという。これにより、セント・トーマス工場は最大90GWhの生産能力を持つ同社最大のセル工場となる見込みだ。
VWグループの技術担当トーマス・シュマル取締役は「この投資は、完全な電気自動車の未来に向けた私たちの旅におけるマイルストーンだ。パトリオット・バッテリー・メタルズ社との提携により、私たちは最先端の持続可能なバッテリー技術の主要原材料を確保するだけでなく、北米への取り組みを強化することになる」と述べた。
パワーコは、VWグループが2022年に設立したバッテリーセルメーカーで、バッテリーセルの開発と生産、バリューチェーンの垂直統合を受け持つ。現在、ドイツのザルツギッター、スペインのバレンシア、カナダのセント・トーマスの3カ所に合計で年間200GWhの生産能力を持つセル工場を建設中だ。(2024年12月19日)