• 2026-07-15

ルノー、仏製EV100万台 中国勢に対抗、国内投資2.3兆円

仏ルノーグループは10日、2010年以降にフランス国内で設計・生産した電気自動車(EV)が累計100万台を突破した、と発表した。中国メーカーが価格競争力を武器に欧州市場への攻勢を強めるなか、ルノーはEVの開発・生産から電池、循環経済までを国内に集積していることを強調し、2021年以降投じた130億ユーロ(約2兆3000億円)に及ぶ投資をさらに同額程度を追加投資する方針も明らかにした。電動化を産業空洞化ではなく、国内の雇用と技術基盤を維持する成長機会につなげたい考えを示した格好だ。

累計100万台のうち60万台を生産したのが、フランス北部のEV産業拠点「エレクトリシティ」だ。ドゥエーやモーブージュなどの工場を集約し、設立から5年間で欧州有数のEV生産拠点に成長した。その生産拡大をけん引しているのが、小型EV「ルノー5 E-Tech エレクトリック」だ。2025年末までに累計生産10万台を突破。2026年には発売以来の累計生産が20万台を超える見通しという。

モーブージュ工場では2011年に商用EV「カングーZ.E.」の生産を開始し、現在は「ルノー4 E-Tech エレクトリック」も手掛ける。エレクトリシティでは2022~25年に700人の正規雇用を創出し、27年までにさらに300人を採用する計画だ。ドゥエー工場では2025年10月以降、550人の派遣労働者を採用し、需要増に対応して26年9月から増産する。同拠点ではルノーとアルピーヌに加え、日産自動車や三菱自動車向け車両も生産している。今後は米フォード向け車両の生産も予定しており、欧州自動車産業における戦略的重要性を高めている。

欧州EV市場では、中国メーカーが低価格を武器に存在感を強めている。これに対しルノーは、フランス国内で競争力のあるEVを設計・生産し、普及価格帯の商品を投入する戦略をとる。象徴となるルノー5 E-Tech エレクトリックは、フランスで1万8810ユーロから購入できる価格設定を掲げる。国内生産を維持しながらEVの大衆化を進め、中国勢との価格競争に対応する狙いだ。

ルノーは2010年以降、「ZOE(ゾエ)」やカングーZ.E.などを通じてEV市場を開拓してきた。現在はドゥエー、モーブージュ、ディエップ、バティリー、サンドゥヴィルの車両工場に加え、クレオン、リュイ、ル・マンの機械系拠点や、循環経済を担うフラン工場「リファクトリー」まで、フランス国内の全拠点が電動化への移行に関与する。

商用EVでは「カングー E-Tech エレクトリック」「トラフィック・バン E-Tech エレクトリック」「マスター E-Tech エレクトリック」を展開する。2026年末には新型トラフィック E-Tech エレクトリックを投入し、欧州メーカーとして初めて小型商用車(LCV)分野にソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)を導入する計画だ。

ルノーは2021年以降、フランス国内の生産拠点の転換とEVバリューチェーンの構築に130億ユーロを投資した。フランソワ・プロボCEOは「適切な条件が整えば、中期経営計画『futuREady』の一環として、さらに130億ユーロを投資する計画だ」と表明した。

追加投資が実現すれば、投資総額は260億ユーロ規模に達する方針だ。ルノーはフランス国内で約3万9,000人を雇用し、サプライチェーンを通じて約3万5,000人の間接雇用を支える。人材面でも、電動化や電池技術、人工知能(AI)、循環経済などを対象に5万3,000人を次世代分野向けに訓練した。

EVシフトは自動車メーカーに巨額の投資負担を迫る一方、電池やソフトウエアなど新たな付加価値が国外に流出すれば、国内の雇用や技術基盤を弱めるリスクもある。ルノーはフランス国内でのEV累計100万台を、こうした産業空洞化に抗する「産業主権」の象徴と位置づ付けてい中国勢との競争が激しさを増すなか、欧州メーカーが高コストの域内生産を維持しながら、価格競争力のあるEVを供給できるか。ルノーのフランス集中戦略は、欧州自動車産業の今後を占う試金石となる。(2026年7月15日)