
メルセデス・ベンツ・グループは7日、販売と金融サービスの両事業を統合し、顧客中心の新体制を構築すると発表した。金融子会社メルセデス・ベンツ・モビリティ(MBM)を2025年12月31日付で本体のメルセデス・ベンツAGに吸収合併する計画で、年明け以降、販売から資金調達・リース・保険までを一元管理する「統合モビリティ組織」が発足する。
フランツ・ライナー氏退任、後任にピーター・ヘン氏
統合は関連当局の承認を前提とし、グループはこれにより販売と金融を緊密に連携させる方針だ。顧客データや取引情報を統合的に活用することで、より効率的で一貫したサービスを提供し、車両購入から利用、更新までをシームレスに結ぶ。メルセデス・ベンツは「統合によって効率と相乗効果を高め、顧客体験を中心に据えたビジネスモデルを実現する」としている。
この再編に伴い、経営人事も大きく動く。メルセデス・ベンツ・モビリティAG取締役会会長のフランツ・ライナー氏は、自身の要請と相互合意により2025年12月31日付で退任。1992年に旧ダイムラー・ベンツに入社して以来、欧州および南北アメリカ市場を統括し、2019年からモビリティ部門のトップとして金融サービス事業のグローバル展開を牽引してきた。
メルセデス・ベンツ・グループ取締役で財務担当のハラルド・ヴィルヘルム氏は「ライナー氏は30年以上にわたり、価値観に基づくリーダーシップでモビリティ事業の発展を支えた。国際的な視野と誠実さで持続的な成長を導いた功績は大きい」と述べた。
ライナー氏の後任には、メルセデス・ベンツ・ファイナンシャル・サービスUSAの現CEO、ピーター・ヘン氏が2026年5月1日付で就任する予定。移行期間中の2026年1月1日からは、同社財務・管理委員のトルガ・オクタイ氏が暫定的に金融サービス事業を統括する。
ヘン氏はデロイト・アンド・トウシュを経て2007年に旧ダイムラー・ファイナンシャル・サービスに入社。アジア太平洋およびアフリカ市場を担当した後、現在は北米地域で事業変革を指揮している。ヴィルヘルム氏は「ヘン氏は25年以上の国際経験を持つ変革型リーダー。強固な企業文化と高いコンプライアンス意識を備え、グローバル金融事業の新時代を牽引する」と評価した。
統合後も、金融サービスの中核機能は規制要件を満たすため「メルセデス・ベンツ・ファイナンシャル・サービス」の組織単位で維持される。グループはこの一体運営によって、金融と販売の相乗効果を高め、デジタル化が進むモビリティ市場での競争力を強化する方針を明確にした。(2025年10月8日〛