
米フォード・モーターは11日、ケンタッキー州ルイビルの「ケンタッキー・トラック工場」に10億ドル(約1,530億円)を投じ、新たな塗装工場を建設すると発表した。既存設備を置き換え、大型ピックアップトラックやSUVの生産効率と環境性能を高める。2026年末までの着工を予定する。
大型車の主力工場を刷新
ケンタッキー・トラック工場は、フォードの米国工場で最大の売上高を上げる主力拠点。約45秒に1台のペースで車両を生産しており、大型ピックアップトラック「Fシリーズ・スーパーデューティー」のほか、大型SUV「フォード・エクスペディション」と「リンカーン・ナビゲーター」を手掛ける。
新しい塗装工場には最新技術を導入し、塗装品質を向上させるとともに、工程の効率化や環境負荷の低減を図る。大型車の主力生産拠点として、長期的な競争力を高める狙いだ。
ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は「今回の投資は、ケンタッキー州の労働力と米国の製造業に対する信頼を示すものだ」とコメントした。
EVと蓄電システムにも各20億ドル
フォードはケンタッキー州で、電気自動車(EV)と蓄電システム関連の大型投資も進めている。ルイビル組立工場には約20億ドルを投じ、新たなEV専用車台「ユニバーサルEVプラットフォーム」の生産拠点へ転換する。独自の「ユニバーサルEV生産システム」を導入し、2027年に発売予定の中型電動ピックアップトラック「フォード・ファゾム」を生産する計画だ。
同プロジェクトでは、ルイビル地域で約2,200人の雇用を創出または維持する。従来の組立工場を、複数車種に柔軟に対応できる先進的なEV生産拠点に改める。
同州グレンデールでは、旧車載電池工場を定置用蓄電システムの量産拠点に転換するため、約20億ドルを投資する。2027年後半に生産を始め、年間20ギガワット時以上の生産能力を確保する。少なくとも2,100人の新規雇用を見込んでいる。
州経済への波及効果は330億ドル超
フォードは1913年、ルイビルで「モデルT」の生産を始めて以来、ケンタッキー州を主要な製造拠点としてきた。現在、州内で1万1,500人以上を雇用し、同州最大の自動車メーカーとなっている。
ボストン・コンサルティング・グループが2020年にまとめた調査によると、フォードによる同州の国内総生産(GDP)への寄与額は年間117億ドルに上る。フォード本体に加え、部品会社や販売店を含めると、約12万人の雇用を支えているという。ルイビル大学の2023年の調査では、取引先を含む州内への経済波及効果を330億ドル超と試算している。
今回の塗装工場を含めた一連の投資により、フォードは高収益の大型車事業を維持しながら、EVと定置用蓄電システムを次の成長分野に据える格好だ。ケンタッキー州を内燃機関車からEV、エネルギー貯蔵までを担う米国の中核生産拠点として位置づける。(2026年9月12日)