
欧州の主要トラック・バスメーカー7社は14日、欧州連合(EU)が2030年に適用する大型車の二酸化炭素(CO2)排出削減目標について、達成期限を3年間延期するよう求めた。ゼロエミッション車の品ぞろえは整ったものの、充電設備や送電網への接続、導入を後押しする政策などが少なくとも3年遅れていると主張。現行日程のままでは、メーカーに巨額の制裁金が科され、脱炭素への投資余力を損なうと警告した。
ゼロエミッション車比率は2.4%
ドイツ・ハノーバーで開催された商用車展示会「IAAトランスポーテーション」で、欧州自動車工業会(ACEA)に加盟する7社の最高経営責任者(CEO)が共同で表明した。共同会見には、DAFトラックス、ダイムラー・トラック、フォード・オトサン、イベコ・グループ、MANトラック&バス、スカニア、ボルボ・グループの経営トップが参加した。
ACEAによると、欧州で販売される大型トラックのうち、電気自動車(EV)などゼロエミッション車が占める割合は現在2.4%にとどまる。国別ではポーランド、スペイン、イタリアがいずれも1%未満。欧州最大級のトラック市場であるドイツでも4.3%、フランスは2.4%にとどまり、導入状況には国ごとに大きな差がある。
EUの30年目標が適用されるまで残り45カ月となったが、現在の市場普及率と目標達成に必要な販売ペースには大きな隔たりがある。
ダイムラー・トラックCEOでACEA商用車部門会長を務めるカリン・ロードストローム氏は、持続可能な輸送への投資とCO2排出ゼロ車の開発は進めたものの、商業的な普及を支える周辺環境が遅れていると指摘。インフラ整備の加速と30年期限の3年間延期を求めた。
トラック用充電器は2,000基未満
メーカー各社が問題視するのは、大型車専用の充電・水素供給設備や、充電拠点を送電網につなぐ系統接続の遅れだ。
ACEAによると、欧州で大型トラックが利用できる公共充電器は2,000基未満にとどまる。必要な整備ペースを確保するには、毎月少なくとも700基を追加する必要があるという。
大型商用車に対応する水素ステーションは稼働中の施設が12カ所未満で、既存施設にも運用上の制約がある。車庫や公共充電拠点を送電網に接続するまで数年かかるケースもあり、運送会社やインフラ事業者に投資意欲があっても導入を進めにくい。
CO2排出量に応じて通行料金を変える制度を実質的に導入している国も、EU加盟国のうち4カ国にとどまる。ゼロエミッション車は電池などによって車両重量が増えるため、積載量の不利を補う重量・寸法規制の改正も実現していない。
各社は、充電・水素供給網の整備に加え、系統接続の迅速化、競争力のあるエネルギー価格、CO2連動型道路料金の導入などが必要だと訴えている。
未達なら巨額制裁金、投資縮小を懸念
EUは大型車メーカーに対し、新車の平均CO2排出量を30年に43%、35年に64%、40年には90%削減するよう求めている。
目標を達成できなかった場合、メーカーには車両1台について、超過したCO2排出量1グラム当たり4,250ユーロの制裁金が科される。ACEAは、30年目標を3ポイント下回っただけでも、業界全体の負担が約22億ユーロに達すると試算する。
メーカー側は、車両を開発・投入する責任を負う一方、普及を左右する充電網や送電網、エネルギー価格、道路料金制度を自ら整備できないと指摘する。普及が進まない状態で制裁金を科しても、ゼロエミッション車の販売増には直結せず、新技術や生産設備に充てる資金が失われると懸念している。
欧州委員会は26年初め、25~29年の排出クレジット計算に一定の柔軟性を持たせる規則改正を打ち出した。ただ、削減目標や制裁金そのものは変更していない。
一方、期限延期は大型車の脱炭素化を遅らせる可能性もある。EUは、メーカー側が求める規制緩和と、充電インフラ整備を加速させる政策をどのように組み合わせるか難しい判断を迫られそうだ。
(ACEA発表資料を基に作成)
(2026年9月15日)