• 2026-09-18

CATL、エジプトで車載電池パック生産へ BMEに技術供与

中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)は、エジプトの電池メーカー、BMEと技術協力契約を結んだ。CATLが電池パックの製造技術や生産設備、技術支援を提供し、BMEがエジプト国内に年産能力1ギガワット時(GWh)の工場を整備する。大型商用車向けから生産を始め、将来は5GWhに拡張し、乗用車向け電池や再生可能エネルギー用蓄電システムにも対象を広げる。

エジプト国旗を背に立つCATLとBMEの契約関係者
CATLとBMEの契約関係者(写真:CATL)

エジプト政府が9月13日に公表した。新工場はBMEが建設・運営し、第1期の投資額は20億エジプト・ポンド(約3900万ドル)を上回る。現地調達率40%を目標に、エジプト国内の自動車メーカーへの供給に加え、海外市場への輸出も計画する。稼働時期や第2期への移行時期は明らかにしていない。

BMEは、エジプトの商用車メーカー、MCVと、自動車関連製品を手掛けるオートDが設立した。CATLは電池パックの技術ライセンス、生産設備、技術者の訓練などを提供する。

第1期では、トラックやバスなど大型商用車向けの電池パックを中心に生産する。第2期には年産能力を5GWhへ引き上げ、乗用車向け電池パックのほか、太陽光・風力発電向けの定置用蓄電システムを生産する構想だ。

今回明らかになったのは、電池セルを組み合わせ、制御・冷却機構などを組み込む「パック工程」の現地化であり、セルそのものをエジプトで生産する計画は公表されていない。このため、当面は輸入セルに依存する可能性が高い。ただ、重量があり輸送や安全管理の負担も大きい電池パックを車両生産拠点の近くで組み立てれば、物流費の削減や車種別仕様への迅速な対応につながる。

今回の提携の意義は、電池工場1カ所の新設にとどまらない。エジプト政府は自動車産業開発プログラムを通じ、完成車の組み立てだけでなく、部品の現地調達率引き上げや輸出拡大を進めている。電池パックは電動車の性能とコストを左右する中核部品で、その国内生産は電動車産業を誘致するうえで重要な基盤となる。

エジプトは自動車や主要部品を輸入に依存してきた。電池パックを国内で生産すれば、輸入代金や海上輸送費を抑え、外貨流出の軽減にもつながることになる。政府発表によると、新工場では技術者の育成や現地サプライチェーンの構築も進める。現地調達率40%という目標を実現するには、筐体や配線、熱管理部品、電池管理システムなど周辺産業の育成が欠かせないのは確かだ。

大型商用車から着手することで、BMEの母体であるMCVはバスやトラックの生産基盤を持ち、乗用EV市場の本格的な立ち上がりを待たずに、公共交通や物流分野で一定の需要を確保しやすいと見られている。大型車は1台当たりの電池搭載量も多く、1GWh規模の設備を稼働させる初期市場として適しているからだ。

エジプトは地中海と紅海を結ぶスエズ運河を抱え、欧州、中東、アフリカの結節点に位置する。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)や東南部アフリカ市場共同体(COMESA)など複数の通商枠組みに参加しており、一定の原産地規則を満たせば、域内市場への輸出拠点となる可能性がある。もっとも、現地調達率40%の達成が直ちに各協定の優遇税率適用を意味するわけではない。輸出先や品目ごとの原産地規則を満たす必要がある。それでも、電池パックの現地生産が軌道に乗れば、エジプトは完成車の組立拠点から、電動車の基幹部品を供給する地域拠点へ一歩進むことになる。

第2期で計画する定置用蓄電池も重要だろう。太陽光や風力発電は天候によって出力が変動するため、普及には電力を一時的に蓄える設備が欠かせない。車載電池で培ったパック製造技術を定置用に展開できれば、交通の電動化と再生可能エネルギー導入を同じ生産基盤で支えることができる。

CATLにとっては、自ら巨額の設備投資を負担する大型セル工場とは異なり、現地企業に技術や設備を供与する形で新市場に進出できる。商用車メーカーと直接結びつくことで、アフリカや中東における電動バス・トラック用電池の需要を早期に取り込む狙いもあるとみられる。韓国の調査会社SNEリサーチによると、CATLの2026年1~7月の世界車載電池搭載量は前年同期比26.6%増の289.6GWhで、市場シェアは39.9%と首位だった。欧州で自社工場や合弁工場を展開する一方、技術ライセンス方式も組み合わせ、地域ごとの市場規模や投資環境に応じて海外展開を広げている。

エジプトの計画は、現段階では電池セルの一貫生産ではなく、電池パックの現地組み立てを中心となる。それでも、世界最大手のCATLから製造技術と品質管理のノウハウを導入する意味は大きい。計画通り現地部品と人材の育成が進むか、さらに域内輸出へ結びつけられるかが、エジプトを地域の電池産業拠点へ引き上げるうえでの焦点となりそうだ。

※エジプト政府発表などで確認。生産開始時期と電池セルの現地生産計画は公表されていない。

(2026年9月17日)