• 2026-09-18

UAW会長選2026、候補6人の争い 10月6日開票、フェイン氏再選が焦点

UAW会長選候補による2026年7月30日の公開フォーラム
7月30日に会長候補による公開フォーラムが行われた(UAWサイトから)

米国の自動車産業で労使関係の行方を左右する全米自動車労組(UAW)の会長選が、投票のヤマ場を迎えている。組合員の投票資格を確定する9月30日を控え、現職のショーン・フェイン会長ら6人が会長の座を争う。郵送投票の締め切りは10月5日、開票は同6日に始まる。2023年に米3大自動車メーカー(デトロイト3)との大規模ストライキを率いたフェイン氏が再選されるかが焦点で、結果は今後のUAWの交渉戦略だけでなく、EV(電気自動車)への移行や米国内生産を巡る労使関係にも影響を及ぼしそうだ。

UAW会長選には、現会長フェイン氏のほか、UAW副会長のリッチ・ボイヤー氏、トリシア・ガイガー氏、ブライアン・ケラー氏、ウィル・リーマン氏、グレッグ・ムーニー氏の6人が立候補している。会長を含む執行部は4年任期で、今回の選挙では書記会計長や副会長なども改選となる。投票資格を持つ会員数は約100万人となる見通しだ。実際の投票者数は10万人程度(2022年実績)で、投票率は約10%にとどまっている。

今回の選挙で最大の焦点は、フェイン氏が2023年以降進めてきた「強い交渉力」を前面に出す路線が、組合員から再び支持されるかどうかとされる。フェイン氏は2023年にフォードモーターとゼネラル・モーターズ(GM)、ステランティスを相手に「スタンドアップ・ストライキ」を実施。3社を同時に標的としながらストライキを段階的に拡大する戦術を取り、最終的に大幅な賃上げを含む新たな労働協約をまとめた。UAWの存在感を大きく高めた一方、その強硬な交渉姿勢には組合内部からも批判する声がある。

今回の選挙では、フェイン氏の元盟友でもあるボイヤー氏らが対抗馬となっている。前回の会長選では、フェイン氏が決選投票で当時の現職レイ・カリー氏をわずか477票差で破った。今回も複数候補による争いとなるため、初回投票で過半数を獲得できるか、その後の決選投票にどの候補が進むかが情勢を左右しそうだ。

米大統領選など政治との距離感もUAW会長選にとって重要な要素と目されている。UAWは2024年の大統領選でジョー・バイデン氏を支持し、バイデン氏の撤退後はカマラ・ハリス氏を支持した。フェイン氏はトランプ氏を厳しく批判してきた一方で、トランプ政権が掲げる輸入関税による国内製造業の保護については、UAWが求めてきた「米国で高賃金の製造業雇用を維持する」という主張と重なり、いわゆる「ねじれ」もみせている。

UAW執行部は民主党との連携を重視してきたが、組合員の政治意識は一枚岩ではないのも注目点だ。現地報道では、2024年の大統領選でUAWの組合員または組合員世帯の有権者の44%がトランプ氏に投票したといわれている。この共和党支持は2020年の42%から若干とはいえ上昇しており、製造業の現場ではイデオロギーによる政党支持よりも実際の労働環境への影響力を重視する傾向が強まっていることを示している。

そのため、今回の会長選が「民主党寄り」とは一概に言えない状況を作り出している。現職のフェイン氏が訴えてきたのは、EVへの移行を否定することではなく、政府やメーカーが進める産業転換の恩恵を組合員が受けられる仕組みをつくることだ。EVや電池工場への投資が増えても、低賃金の非組合工場が拡大すれば、UAWにとっては産業政策の成功とはいえないからだ。同時に、関税によって海外からの輸入を抑え、米国内での生産を増やす政策は、UAWが求める国内雇用の維持とは一定の方向性を共有する。フェイン氏自身もトランプ政権の自動車関税について、米国の製造業と労働者を守る政策として評価してもいた。

UAWはデトロイト3だけでなく、南部などの非組合工場への組織化も進めている。2024年にはフォルクスワーゲンのテネシー州チャタヌーガ工場で組合結成に成功し、これまで組織化が難しかった地域で勢力を広げる足掛かりを得た。日本メーカーを含む米国の非組合工場にとっても、UAWの組織拡大は今後の労務政策を考えるうえで重要なテーマとなるのは間違いない。さらに、UAWが向き合う課題は従来型の自動車工場の労働条件にとどまらず、EV・電池工場の雇用条件、海外への生産移転、関税政策に加え、自動化やAIによって生産現場の仕事がどう変わるのかも、今後の労使交渉に影響しそうだ。

9月30日は投票資格の基準日で、郵送された投票用紙は10月5日まで受け付けられる。開票は10月6日に始まる予定だ。過半数を得る候補がいなければ、決選投票に進む可能性もある。2023年のストで米自動車産業の労使関係を大きく動かしたフェイン氏が、その路線を維持できるのか。それとも組合員の不満や現場の政治意識の変化が別の候補への支持につながるのか。10月の開票結果は、米国の自動車労働者が「高賃金の国内生産」をどのような条件で求めているのかを占う一つの指標になる。(2026年9月11日)