
欧州自動車工業会(ACEA)は8日、欧州連合(EU)が策定を進める「Industrial Accelerator Act(IAA、産業加速法)」について初期見解を公表し、域内調達比率など法案の内容に懸念を示した。欧州自動車業界としてEUの産業基盤強化には賛同する一方、「現行案は実際のサプライチェーンの現実を十分反映していない」として、制度設計の見直しを求めた。
「域内調達要件は現実離れ」 電池供給網整備へ支援要求
IAAは、欧州域内での電池や重要部品の生産を促進し、戦略技術分野で中国など第三国への依存低減を狙うEUの新産業政策。車両のEU域内組立や、電池部材・重要部品の高い域内含有率を求める内容が柱となっている。
これに対し、ACEAは声明で「欧州の電池バリューチェーン構築は技術主権確立の基盤になる」と評価した一方、電池部材の域内供給拡大を前提とした現在の制度案には課題が多いと指摘した。安価なエネルギー供給や許認可迅速化、投資支援がなければ「欧州内の電池生産は想定通り拡大しない」と警鐘を鳴らした。
「欧州車」定義に不透明感
とくに、低炭素鋼材・アルミニウムの定義や、「EU域内組立」の法的解釈が未整理だと問題視した。「こうした定義が曖昧なままでは、メーカー側が基準順守の実現可能性を判断できない」と訴えた。また、域内調達義務によって車両製造コストが上昇し、販売価格引き上げにつながる可能性にも言及。そのためACEAは、EU域内生産の電気自動車(EV)向け優遇策の拡大や、自治体向け電動バス・トラック調達への財政支援を求めた。
商用車分野への影響も懸念
ACEAは、トラックやバスなど大型商用車分野についても「現行案は実態を十分反映していない」と指摘した。架装工程を含む多段階生産や開発期間の長さ、公共交通向け車両に必要なサイバーセキュリティー対応などが考慮不足だと主張した。とくにバス市場では、中国勢など域外メーカーとの競争が激化しており、「法施行時には手遅れになる可能性がある」と危機感を示した。
EUでは、自動車産業の競争力低下や中国製EV流入への警戒感を背景に、サプライチェーンの欧州回帰を促す政策論議が加速している。ただ、自動車メーカー側は、過度な域内調達義務がコスト増や供給制約を招くリスクもあるとして、現実的な制度設計を求めている。(2026年5月9日)