• 2026-09-04

シャオミEV、27年に欧州参入 独有力8ディーラーと販売網構築へ

中国・小米(シャオミ)傘下のシャオミ・オートは3日、2027年にドイツを含む欧州市場へ参入すると発表した。ベルリンで開かれている家電・IT見本市「IFAベルリン2026」で、ドイツの有力自動車ディーラー8グループと販売・サービス網の構築に向けた覚書(MOU)を締結した。中国で急成長したEV事業を海外へ本格展開する。

シャオミはまずドイツで販売・サービス基盤を整備し、欧州の他地域にもディーラーとの提携を広げる。ミュンヘンには欧州研究開発(R&D)拠点を設けており、商品開発と販売、アフターサービスの両面で現地化を進める。提携するのは、エルンスト・デロ、アウトハウス・ディネビア、エミール・フレイ・ドイツ、フェット&ヴィルツ・アウトモビーレ、ハーン・アウトモビール、ルーエグ・モビリティ、ペンスキー・ヤコブス・イノベーション、SPTアビオールの8グループ。このうちエルンスト・デロを傘下に持つデロ・グループは、オペルをはじめBMW、MINI、トヨタ、レクサスなどを扱う大手マルチブランド販売会社。エミール・フレイ・ドイツもBMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、トヨタ、レクサス、ボルボなど多数のブランドを展開する欧州有数の自動車販売グループだ。フェット&ヴィルツはBMWとMINIを主力とし、ハーン・アウトモビールはフォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、シュコダ、セアト、クプラなどフォルクスワーゲン・グループ各ブランドを扱う。ルーエグはメルセデス・ベンツを中心に、ボルボやフェラーリなども展開する老舗販売グループとして知られる。

欧州進出の初期段階から、既存大手メーカーやプレミアムブランドを扱ってきた有力ディーラーがシャオミとの協議に加わった点が注目されそうだ。シャオミにとっては販売、整備、アフターサービスの基盤を早期に確保できる一方、欧州のディーラーにとっても、中国市場で急速に販売を伸ばす新興ブランドを商品ラインアップに加える可能性が生まれる。今回の提携は、双方の思惑が合致した欧州展開の第一歩とみることができる。

シャオミ・オートの兪立国副総裁は「欧州への長期的な投資に取り組む」とし、ミュンヘンのR&D拠点と販売・サービスパートナーのネットワークを通じて欧州の顧客に商品とサービスを提供すると説明。現地パートナーとの連携を欧州戦略の中核に据える考えを示した。

シャオミはスマートフォン大手として培ったソフトウエアやIoT(モノのインターネット)の技術を自動車に展開し、24年3月に初のEV「SU7」の納車を始めた。26年7月までの累計納車台数は70万台を突破した。SU7シリーズは発売から28.5カ月で累計50万台を超えたほか、SUV「YU7」は発売時に18時間で24万台を超える確定注文を集めた。シャオミはスマートフォンや家電、EVを一体化する「Human × Car × Home(ヒューマン×カー×ホーム)」を中核戦略に掲げる。自動車を単独の商品ではなく、スマートフォンやウエアラブル端末、家電などをつなぐデジタル・エコシステムの一部に位置付けている。

一方、欧州で販売する車種や価格、具体的な投入時期は明らかにしていない。中国ではSU7シリーズに加えYU7を展開しており、26年7月にはレンジエクステンダーEV(REEV)「スカイノマド」シリーズの技術も発表した。

今回の発表で注目されるのは、シャオミが欧州進出に際し、自前の販売網だけに頼るのではなく、既存の有力ディーラーとの連携を前面に出したことだ。中国の新興EVメーカーはオンライン販売や直営店舗など、従来の自動車メーカーとは異なる販売方式を採用してきた。一方、欧州で本格的に販売台数を伸ばすには、新車販売だけでなく、整備や修理、保証、中古車、下取りなどを含めたアフターサービス網の整備が欠かせない。

シャオミはスマートフォン事業ですでに欧州でも高い知名度を持つものの、自動車では新規参入企業だ。とりわけドイツはフォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツなど有力メーカーの本拠地で、ブランドだけでなく販売・サービス網の競争力も高い。そうした市場でゼロから自前の店舗網を構築するのではなく、既存ディーラーの顧客基盤や整備能力を活用すれば、市場参入に要する時間と投資負担を抑えられる。同時に、既存ディーラー側の動きも見逃せない。今回名を連ねたのは、欧州メーカーや日本メーカーの販売を長年手掛けてきた有力企業だ。正式契約前の段階とはいえ、8グループがシャオミとの提携に動いたことは、中国発の新興EVブランドを欧州の既存自動車流通が新たなビジネス機会として受け入れ始めていることをうかがわせる。

シャオミの欧州参入は、中国EVメーカーの海外戦略が新たな段階に入りつつあることも示している。これまで中国EVの競争力は価格や航続距離、電池性能、ソフトウエアなど商品面から語られることが多かった。しかし欧州でブランドを定着させるには、購入後の整備や保証、部品供給、下取り、中古車価値まで含めた顧客体験が重要になる。自動車はスマートフォンとは異なり、販売後も長期間にわたって顧客との関係が続くからだ。

シャオミは欧州での正式参入を前に、8月末には自動車事業のグローバルサイトと海外向け公式SNSを開設した。公式サイトにはディーラーや販売代理店向けの問い合わせ窓口も設け、販売網の構築を進めている。中国で納車開始から2年余りで70万台規模まで成長したシャオミが、その勢いを欧州でも再現できるか。27年の市場参入は、中国の新興EV勢が商品力だけでなく、欧州の既存自動車流通網を取り込みながら市場を開拓する新たな試金石となりそうだ。(2026年9月4日)