• 2026-08-16

キャデラック、レース技術を富裕層市場へ 830馬力「V-ONE」公開

ゼネラル・モーターズ(GM)のキャデラックは14日、1人乗りの高性能コンセプトカー「V-ONE」を公開した。世界耐久選手権(WEC)などに参戦するレーシングカー「V-Series.R」の車体やパワートレイン技術をほぼそのまま応用し、システム最高出力は830馬力に達する。レースで培った技術を富裕層向けの高性能車へ展開する可能性を探る。現時点で市販計画は明らかにしていない。

V-ONEの名称は、高性能モデル「V-Series」の系譜と、1台限りを意味する「one-of-one」、1人乗りの「single-seat」を組み合わせた。キャデラックとして初めての試みとなる。V-ONEはキャデラックが参戦するLMDh(ル・マン・デイトナ・h)カテゴリーの技術を基盤に、キャデラック・デザイン、キャデラック・レーシングに加え、レーシングカーのシャシーを手掛けるイタリアのダラーラが共同開発した。

同車は単にレーシングカーをイメージしたデザインではなく、競技車「V-Series.R」のハードウエアを広範囲に流用していることが特長で、V-Series.Rと同じダラーラ製カーボンモノコックを採用し、ボディーもレーシングカーと同じ金型を使ったという。サスペンションやトランスミッション、一部の電子システムもV-Series.Rをベースとした。前後にはダブルウイッシュボーン式サスペンションを備える。

パワートレインにはV型8気筒エンジンと電動システムを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載する。キャデラックによると、自然吸気5.5リットルV8はV-Series.Rと基本を共通化する。レースの出力規制を受けないV-ONEではハイブリッドシステムを加速時のブーストとして活用し、システム出力を約830馬力まで高めた。直線ではボタン操作によって134馬力分を追加できるという。

一方、競技車は専門スタッフによる運用を前提とするため、V-ONEではエンジンやハイブリッドシステムを一般の顧客でも扱いやすいよう変更した。キャデラックは、V-Series.Rに対して約10%以内のラップタイム差を目標としている。

キャデラックは2023年からV-Series.Rで米IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権とFIA世界耐久選手権(WEC)に参戦している。2023年にはIMSAでメーカー、チーム、ドライバーの各タイトルを獲得。25年のル・マン24時間ではハイパーポールを獲得するなど、モータースポーツでブランド力を高めてきた。

V-ONEは、こうした競技活動を市販車のブランド価値へつなげる役割を担う。外観はV-Series.Rのプロポーションを受け継ぐ一方、シルバーから濃紺へと変化するグラデーション塗装を施した。耐久レースで昼から夜へと移り変わる時間を表現したという。新しいV-Seriesのロゴやホイールデザインも採用し、ホイールは今後のV-Series市販車のデザインを先取りした。

室内は1人乗りとし、カーボン構造を露出させながら高級素材を組み合わせた。ステアリングホイールのスイッチ配置は顧客に合わせて設定でき、シートもドライバーの体格に合わせて製作する。走行データを分かりやすく表示し、ドライバーの運転を支援するコーチング機能も盛り込む。

V-ONEが示すのは、キャデラックがレース活動を広告やイメージづくりだけでなく、超高性能車の商品開発につなげようとしていることだ。キャデラックは近年、少量生産の最高級EV「CELESTIQ(セレスティック)」で高級車市場の上限を引き上げる戦略を進めている。V-ONEはその高性能車版とも位置付けられ、同社は「CELESTIQが究極のラグジュアリーなら、V-ONEは究極のパフォーマンス」と説明する。

V-ONEは14日、米カリフォルニア州カーメルで開催された高級車イベント「The Quail, A Motorsports Gathering」で披露された。販売価格や生産台数などは発表しておらず、キャデラックは現段階では市販しないコンセプトとしている。(2026年8月16日)