
ゼネラル・モーターズ(GM)と中国・上海汽車集団(SAIC Motor)は4日、中国の合弁会社「上汽GM(SAIC-GM)」の協力契約を2047年まで20年間延長すると発表した。2027年6月に満了予定だった30年間の契約を更新し、世界最大の自動車市場である中国での協業を継続する。中国メーカーの台頭で外資系自動車メーカーを取り巻く競争環境が大きく変化するなか、両社は電動化や知能化への対応を共同で進めるとともに、中国で培った技術を海外市場へ展開する新たな成長戦略を打ち出した格好だ。
GMは事業再建、SAICは「中国主導」の合弁へ
今回の契約更新は、長期にわたる協議を経て実現した。市場では、2027年の契約満了を前に更新交渉の行方に注目が集まっていたが、両社は協業の枠組みを維持することで一致した。ただし、その背景には「協業継続」という共通認識の一方で、それぞれ異なる戦略的な狙いがあったようだ。
GMにとって契約更新は、中国事業の収益回復を定着させる意味合いが大きい。同社は2024年、中国の合弁事業で3億4,700万ドルの損失を計上するとともに、50億ドルを超える減損・事業再編費用を計上した。その後、在庫の適正化や新エネルギー車(NEV)の販売回復、生産能力の最適化を進めた結果、2025年には中国事業が黒字へ転換し、以降5四半期連続で黒字を確保した。契約更新は、この回復基調を維持するとともに、電動化投資の負担を上海汽車と分担しながら、ビュイック、キャデラックといった主力ブランドの競争力を維持する狙いがある。
一方、上海汽車が重視したのは、合弁会社の競争力を中国主導で高めることだ。同社は、中国の研究開発力やサプライチェーンを生かし、商品企画やソフトウエア開発、サプライチェーン管理を中国側が主体となって進める体制への転換を志向してきた。従来の「海外メーカーが技術を供与する合弁」から、中国市場で生まれた技術や開発力を基盤とする「共同開発型」の協業モデルへ進化させることが狙い。この考え方は、上海汽車がアウディとの新たな協業で、中国チームがプラットフォームやスマートコックピット、運転支援システムの開発を主導している取り組みにも表れており、上汽GMでも同様の体制強化が進む見通しだ。
契約更新を後押しした3カ年戦略
契約更新に向けた機運が高まった背景には、今年3月に開催された上汽GMディーラー・パートナーサミットで、中長期の投資計画が株主双方から承認されたことも大きい。上汽GMの盧暁総経理は、両社が今後の投資計画を承認し、中長期戦略を引き続き支援する方針を確認したと説明。ビュイックとキャデラックを中核ブランドに据え、商品競争力と技術開発への投資を継続する姿勢を示していた。契約更新交渉が続く中でも、双方が協業を前提に経営資源を投入する意思を示したことで、市場では「協力関係が突然終了する可能性は低い」との見方が広がっていた。
毎年10車種超を投入、中国から世界市場へ
今回の契約延長を受け、上汽GMは3カ年戦略を本格的に推進する。戦略の柱は、「健全経営」「技術・製品」「グローバル展開」の三つ。持続的な収益基盤を確立しながら、中国主導の研究開発によって商品投入のスピードを高め、中国で生まれた競争力を海外市場へ展開する構想だ。今後3年間は毎年10車種以上の新型車・改良車を投入する計画で、重点分野として①MPV市場での首位維持、②ビュイックブランドの新エネルギー車シフト、③キャデラックの電動化、④ガソリン車の商品競争力強化――の四つを掲げる。
MPV事業には3年間で100億元超を投資するほか、ビュイックのプレミアムNEVブランド「ELECTRA」の主力車「E7」、キャデラックのフルサイズ電動SUVなどを順次投入する計画だ。また、ガソリン車についても電子アーキテクチャーのローカライズを進め、知能化機能を強化する。
GMは今回の発表で、2030年までに30車種以上のNEVを市場投入する方針も明らかにした。さらに、中国で開発したビュイックELECTRA E7を10月から海外市場へ輸出する計画で、中国市場向けに培った開発力を中東や南米、アジア太平洋地域などへ展開する。
今回の契約延長は、30年に及ぶ合弁関係を維持するだけでなく、外資メーカーが技術を持ち込み、中国側が生産・販売を担う従来型の合弁モデルから、中国の開発力を世界展開へ生かす新たな協業モデルへの転換を印象付けるものとなりそうだ。(2026年8月5日)