• 2026-05-30

フランス、英の「メード・インEU」対象化に前向き

日産英国工場でのEV生産

独の電動モビリティ専門メディア「エレクティブ(Electrive)」によると、フランス政府が欧州連合(EU)の産業振興策「インダストリアル・アクセラレーター・アクト(IAA)」で導入が検討されている「メード・インEU」規則について、英国を対象に含める可能性に前向きな姿勢を示した。英国が制度の対象となれば、同国で生産する日産自動車やジャガー・ランドローバー(JLR)、トヨタ自動車などに恩恵が及ぶ可能性がある。

エレクティブが引用した英紙フィナンシャル・タイムズによると、ニコラ・フォリシエ仏貿易担当相は「英国はEU加盟国ではないが、極めて近い隣国であり、経済的にも深く統合されている。この問題をどう解決するのか議論する必要がある」と述べ、英国の扱いについて再検討する考えを示した。IAAは欧州委員会が2026年3月に公表した法案で、自動車や電池など戦略産業の競争力強化と、米国や中国への依存低減を目的としている。法案が現行案のまま成立した場合、EV(電気自動車)などが加盟国による補助金や公共調達の対象となるには、EU域内で高い付加価値を生み出していることを証明する必要がある。

もっとも欧州委は、自由貿易協定(FTA)締結国など「信頼できるパートナー国」に対して例外を設ける可能性も示している。ただし、その場合はEU企業にも同等の市場アクセスを認める「相互主義」が条件となる見通しで、業界ごとに評価を実施する方針だ。このため、英国が最終的に対象となるかは今後の協議に委ねられている。

英国の自動車業界は法案の動向を注視している。日産は3月、英国が「メード・インEU」規則の対象外となった場合、同社のサンダーランド工場に深刻な影響が及ぶ可能性があると警告していた。同工場の従業員数は約6,000人で、関連サプライチェーンを含めると約3万人の雇用を支えている。英国政府も法案公表前からEU側への働きかけを強めているという。英国はEU離脱後も自動車産業のサプライチェーンが欧州大陸と密接につながっており、EU市場は依然として最大の輸出先であるためだ。

今回のフランスの姿勢変化は、欧州の産業保護政策が現実的なサプライチェーン維持との両立を模索し始めたことを示している。特に自動車産業では、英国とEUの生産・調達網が長年にわたり一体化しており、英国を排除した場合、欧州メーカーや部品メーカー自身の競争力低下につながる可能性がある。一方、欧州部品業界団体のCLEPAは、域内投資や雇用確保の観点から厳格な原産地規則の維持を求めており、今後のEU加盟国および欧州議会での審議では、産業保護と市場開放のバランスが大きな論点となりそうだ。(2026年5月29日)