
欧州自動車部品工業会(CLEPA)は17日、翌18日に開催されるEU理事会(閣僚理事会)を前に、欧州委員会が策定を進める「産業加速法(Industrial Accelerator Act=IAA)」について、欧州域内の製造業基盤を守るための実効性ある制度設計を求める声明を発表した。
CLEPAは、欧州の自動車産業が中国勢との競争激化や生産拠点の海外流出という課題に直面するなか、IAAの中核となる「欧州製車両」の定義を厳格に維持することが不可欠だと主張。欧州議会とEU理事会に対し、欧州委員会が提案している基準を後退させないよう求めている。
背景には、欧州の自動車産業において部品メーカーが担う役割の大きさがある。CLEPAによると、欧州で生産される自動車の部品の75%は域内で製造されており、部品産業は雇用や設備投資、付加価値創出の中核を担っている。仮に欧州製車両の認定基準が緩和されれば、自動車メーカーが域外から部品を調達するインセンティブが高まり、欧州域内のサプライチェーンが弱体化する恐れがあるという。
こうした懸念はすでに数字にも表れている。EUへの中国製自動車部品の輸入額は2025年に82億ユーロへ拡大し、この5年間でEUの対中自動車部品貿易収支は約70億ユーロの黒字から7億ユーロの赤字へと転落した。CLEPAは、公正な競争環境が整備されなければ、2030年までに欧州の自動車サプライヤー業界で最大35万人の雇用が失われる可能性があると警告している。
そのためCLEPAは、IAAの適用対象に自動車部品市場を明確に含めることに加え、補助金支援を受けた安価な域外製品の流入を防ぐ仕組みの導入を提言した。また、電池やEV関連サプライチェーンにおける外国直接投資(FDI)の基準を適切に設定し、供給網の強靱化を図るべきだと訴える。さらに、英国やEFTA(欧州自由貿易連合)加盟国との連携を進める一方、迂回輸入を防ぐリスクベースの管理体制も必要だとしている。
CLEPAは「IAAは万能薬ではない」としながらも、欧州を自動車製造と技術革新の拠点として維持するための重要な第一歩と位置付ける。今後は制度整備だけでなく、エネルギーコストの低減や投資環境の改善など、欧州の製造業競争力を高める構造改革も求められるとの認識を示した。
今回の提言は、自動車産業の脱炭素化やEVシフトを進める一方で、域内の雇用と産業基盤をいかに維持するかというEUの課題を改めて浮き彫りにした格好だ。特に欧州委員会が検討する「欧州製」認定制度は、今後の部品調達戦略や投資判断に直結するため、自動車メーカーだけでなくサプライヤー各社の関心も高まっている。欧州自動車産業の将来像を左右する議論として、6月18日のEU理事会での議論が注目される。(2026年6月17日)