• 2026-07-02

ルノー、車載AI「ジェミニ」導入拡大 SDV時代の顧客体験競争が加速

ルノーは6月29日、グーグルの生成AIアシスタント「ジェミニ」を、車載マルチメディアシステム「オープンアールリンク」に段階的に導入すると発表した。既存車両にも無線更新(OTA)で提供することで、販売後も機能を進化させるソフトウエア定義車両(SDV)戦略を一段と推進する。

すでに、6月15日からサービスを開始した。対象は、グーグルを標準搭載するオープンアールリンク採用車で、ユーザーが任意で利用を選択できる「オプトイン方式」を採用する。追加料金は不要で、既存のコネクティビティ契約期間にも影響しない。対象車種は、欧州市場の「トゥインゴ」から「ラファール」までの全ラインアップに加え、インド向け「ダスター」や新型「ボレアル」など海外モデルにも拡大する。

ジェミニは、従来のグーグルアシスタントに比べ、会話の文脈や利用者の意図を理解し、複雑な指示にも対応できる点が特徴だ。定型的な音声コマンドを覚える必要がなく、自然な会話を通じて車両機能を操作できる。例えば、「車内が寒い」と話しかけるだけで空調を調整したり、「パリへ向かうが環状道路は避けたい」といった曖昧な指示にも対応する。電気自動車(EV)では、バッテリー残量を考慮したルート提案も可能になる。将来的には「ジェミニ・ライブ」機能も追加され、連続した会話や複数の依頼、会話途中での割り込み、言語切り替えにも対応する予定だ。

ルノーによると、オープンアールリンクに統合されたジェミニは、スマートフォン連携機能の「アンドロイドオート」を超え、空調、ナビゲーション、ラジオ、車両設定などを直接制御できる点が強みという。取得した車両データは、同一のグーグルアカウントで利用する他デバイスとも連携し、一貫したユーザー体験を提供する。音声操作の高度化によってタッチ操作を減らし、運転中の注意散漫を抑制することも狙う。車載AIが複数のタスクを連続して処理することで、安全性と利便性の向上につなげる考えだ。

オープンアールリンクは、2022年に「メガーヌ・イーテック・エレクトリック」で初採用されて以来、OTAによる継続的な機能強化を進めてきた。動画配信サービスや音楽アプリの追加、EV向け機能を強化したグーグルマップの更新など、ソフトウエアを通じて商品価値を高める取り組みを続けている。今回のジェミニ導入は、車両販売後も継続的に機能を進化させるSDV時代のビジネスモデルを象徴する動きといえる。ルノーは、英語、フランス語、ドイツ語、日本語など13言語への対応を順次進め、今後さらに対応言語を拡大する方針だ。

車載向け生成AIの導入競争は世界の自動車メーカーに広がっている。ボルボ・カーズやポールスターは2026年からジェミニの展開を始め、ゼネラル・モーターズも約400万台の既販車へのOTA配信を進めている。一方、メルセデス・ベンツは独自の生成AI機能を備えたMBUXを強化し、BMWはアマゾンの次世代音声AI「アレクサ・プラス」の採用を進めるなど、各社とも車内体験を新たな競争領域と位置づけている。こうしたなか、ルノーの特長は「トゥインゴ」から「ラファール」までの量販車全体を対象に、既販車も含めてOTAで機能を進化させる点といえる。生成AIを一部の高級車向け装備ではなく、幅広い顧客に提供することで、「売って終わり」ではなく、購入後も価値が向上し続けるSDV時代のビジネスモデルへの転換を加速させる狙いがある。(2026年7月1日)