• 2026-10-18

BMW、日常の移動に備える防護セダンを提案 拳銃への防護と7シリーズの快適性を両立

BMWコンセプト7プロテクションの車体全景
BMWコンセプト7プロテクション(写真:BMW)

独BMWは12日、高級セダンの7シリーズに防弾機能を組み込んだ「BMWコンセプト7プロテクション」を発表した。銃撃などを想定しながら、外観は通常の7シリーズに近い姿を維持し、高度な警護を要する既存の防護車両とは用途を分け、日常の使いやすさや快適性、BMWらしい走行特性との両立をめざした。

対象は、移動中の危険に備えたい個人や企業、各種組織。防護装備を目立たせず、普段の移動にも使える高級セダンとして提案する。当初は欧州の一部市場を想定しており、発売時期や価格は公表していない。

BMWコンセプト7プロテクションに装着した厚い防弾ガラス
通常の量産車より厚い防弾ガラス(写真:BMW)

同車は新たな「BayB」規格に適合し、9×19ミリ弾や.44マグナム弾など、指定された拳銃弾への防護を想定する。移動中の暴力的な襲撃や、治安が不安定な地域で遭遇する予測しにくい危険に備える設計だ。窓には通常の量産車より厚い防弾ガラスを使用する。ドアには防弾鋼板や繊維強化複合材料を組み込み、ガラスと車体、ドアの接合部も含めて防護構造を設計した。客室前後の隔壁や屋根にも保護材を配置する。

特長的なのは、パノラマガラスルーフの外観を残しながら、その下に鋼板と複合材料による防護層を設けたことだ。だが、この構造に伴いルーフのサンブラインドは常時閉じた状態となる。ドアや窓を開けずに車外の人と会話できるインターホンや、光と音で周囲に知らせる襲撃警報システムも備える。前後のサイドウィンドウは電動で開閉できるものの、全開にはできない。

車両は「M760e xDrive」の技術をベースに、3.0リッター直列6気筒ガソリンエンジンと8速変速機に組み込んだ電気モーターを組み合わせるプラグインハイブリッド方式を採用する。駆動システムの最高出力は450キロワット(612馬力)、最大トルクは800ニュートンメートルで、四輪駆動システム「xDrive」となる。BMWは、防護装備の追加に合わせてシャシー、ブレーキ、駆動系、運転支援システムを調整するとしており、車両全体を一体で設計することで通常の7シリーズに近い乗り心地や運転感覚をめざしている。

快適性もポイントだ。室内にはメリノレザーやアルカンタラを使用し、長距離移動時の乗り心地などを重視。後席には、折り畳みテーブルと冷蔵ボックスを備えた「BMW Individual」の専用コンソールを初披露した。テーブルにはワイヤレス充電機能も組み込んだ。同社ではこの後席コンソールを通常の7シリーズでも2027年後半に提供する予定だ。

高級車メーカーが防護車両を手がける例としては、メルセデス・ベンツの「S 680 GUARD 4MATIC」や、アウディの「A8 L Security」がある。メルセデス・ベンツは防弾ガラスと車体の双方で防護等級VR10を取得し、アウディも高度な警護要件に対応する防弾仕様のセダンを展開してきた。高級車の外観や居住性と防護性能を組み合わせる考え方は、各社に共通する。

今回のBMWで注目できるのは、防護性能をさらに高める方向に加え必要な防護範囲を絞った商品を提案した点だ。すべての顧客が同じ脅威にさらされるわけではない。拳銃による襲撃に備えつつ、日常の移動で快適性や扱いやすさを重視する顧客に向け、既存モデルとは異なる選択肢を示した。BMWは、近年、実際の脅威と顧客が感じる不安の双方が増し、認証内容が明確な防護車両への関心が高まっていると説明する。45年以上にわたる防護車両の開発・製造経験を、異なるリスクを抱える顧客へ広げる取り組みと捉えられる。

もう一つは、防護材の装着にとどまらず、完成車としての開発、試験・認証、生産、アフターサービスをBMWが一体で担う点だ。装備追加が重量や制動、操縦性に及ぼす影響まで調整し、防護性能とBMWの商品特性を両立させる姿勢を示している。ただし、現段階では商品構成の拡充に向けたコンセプトであり、市販化の詳細は未公表だ。想定する防護範囲を明示した今回の提案が、どの市場で、どのような仕様の商品へつながるかが今後の焦点となる。

(2026年10月13日掲載)