
フォルクスワーゲン(VW)グループは28日、独ブラウンシュヴァイク工科大学と共同で、「製品開発におけるAI手法」をテーマとする新たな教授職を設置する、と発表した。モビリティ分野における最先端研究の強化と、研究成果の産業応用への移転加速を狙う。
製品開発にAI活用、産学連携で実装を前倒し
新講座は、仮想製品開発やメカトロニクス、自動運転機能、実車データ解析など、モビリティ研究におけるAI活用領域を幅広くカバーする。ソフトウエア主導の開発プロセスへの転換を見据え、AIベースの新たな開発手法の確立を後押しする。
拠点は同大学工学設計研究所に置き、約1000人の研究者と50社超の企業が参画する欧州有数の研究拠点であるニーダーザクセン自動車研究センター(NFF)と連携する。2026年10月までの着任を目指し、5年後には終身教授職への移行を想定する。
同社IT担当取締役のハウケ・シュタルス氏は「AIは当社にとって中核技術であり、開発プロセスの高速化と市場投入の迅速化に直結する」と強調。産学の知見共有を通じ、サプライヤーを含むエコシステム全体での競争力強化につなげる考えを示した。
また、大学側のアンゲラ・イッテル学長は「ソフトウエアが車両開発の中心となる中、AIは次世代モビリティの原動力」と指摘。産学連携の深化が社会的価値の高い研究創出に不可欠との認識を示した。
今回の取り組みは、ニーダーザクセン州におけるイノベーション基盤の強化も視野に入れる。サプライヤーやスタートアップの参画を促し、研究段階から実務要件を取り込むことで、技術の社会実装と産業応用のスピードを高める。
■解説:デジタルツインとAIエージェントが開発革新の軸
自動車開発では、車両や部品を仮想空間上で再現する「デジタルツイン」の活用が進む。AIを組み合わせることで設計変更や性能検証を早期段階で実施でき、従来の試作中心の開発手法に比べ大幅な効率化が可能となる。
さらに、ソフトウエア試験などを自律的に担うAIエージェントや、複数領域のデータを統合する基盤モデル(ファウンデーションモデル)の導入も進展。製品開発全体を横断するデジタルワークフローの高度化が、SDV(ソフトウエア定義車)時代の競争軸として浮上している。(2026年5月29日)