• 2026-06-04
2023年6月に、サザーランド工場で生産累計1,100万台を達成した。

日産自動車は3日、中国自動車大手の奇瑞汽車(チェリー)グループ傘下のチェリー・インターナショナルUKと、英国サンダーランド工場でチェリーブランド車の生産を検討するための覚書(MOU)を締結した、と発表した。実現すれば2027年度にも同工場の第1生産ラインでチェリー向け乗用車の生産を始める。

日産は5月、英国工場の稼働率向上を目的に車両生産を第2生産ラインへ集約する方針を公表していた。今回の協議は空いた生産能力を外部メーカー向けに活用する取り組みと位置づけられる。

覚書では工場設備の所有権は引き続き日産が保有し、従業員も日産が雇用を維持する。生産委託によって固定費負担を軽減し、欧州事業の収益改善につなげたい考えだ。

日産のAMIEO(アフリカ・中東・インド・欧州・オセアニア)地域を統括するマッシミリアーノ・メッシーナ氏は「事業運営にとって重要な一歩」と述べ、今後数カ月かけて具体的な枠組みを協議するとしている。

今回の動きは、日産と奇瑞の関係強化の流れの一環ともみられる。日産は今年1月、南アフリカ・ロスリン工場および近隣のプレス工場をチェリー南アフリカへ売却することで合意したと発表している。取引完了後は工場の土地や建物、関連設備を奇瑞側が取得し、日産従業員の大半も同等条件で再雇用される予定だ。

ロスリン工場は近年、稼働率低下が課題となっていた。日産は生産事業から撤退する一方、販売・サービス事業は継続し、「パトロール」や新型「テクトン」などの商品投入を進める方針を示している。南アフリカでは工場資産を奇瑞へ譲渡し、英国では余剰生産能力を奇瑞向けに提供するという形で、両社の協業は地域ごとに異なる形態を取りながら拡大している。

背景には、中国メーカーの急速な国際展開と日産の事業再構築がある。世界市場で競争力を高める中国勢は、欧州やアフリカなどで現地生産拠点の確保を急いでいる。一方、日産は世界市場で工場稼働率の改善や固定費削減を進めており、自社単独での生産体制維持よりも、外部パートナーとの協業による資産活用を重視する方向へ舵を切っている。

奇瑞は中国国内での販売好調に加え、欧州、中東、南米、アフリカへの展開を加速しており、英国での現地生産が実現すれば欧州市場攻略の足掛かりとなる可能性が高い。

日産と中国メーカーの関係では、中国市場で東風汽車との長年の合弁事業を展開してきたが、近年は中国勢との協業が販売や開発にとどまらず、生産資産の活用や工場運営にまで広がり始めている。英国での受託生産検討と南アフリカでの工場譲渡は、その象徴的な事例といえそうだ。世界的な供給過剰とEV競争の激化が進む中、日産が中国メーカーとの連携を通じてグローバル生産体制の再構築を進める動きは、今後さらに広がる可能性があるとみられている。(2026年6月3日)