
ボルボ・カーズは13日、ドライバーの運転行動を分析して安全運転を支援する新アプリ「Safety Coach(セーフティ・コーチ)」を導入すると発表した。ブレーキや加速、コーナリングなどの走行データから安全運転を数値化し、改善方法を助言する。まずスウェーデンとノルウェーで展開し、本人の同意を前提にデータを保険会社と共有、安全運転の度合いを保険料にも反映する。将来は米国や欧州の他市場にも広げる。
運転を採点、改善方法も助言
セーフティ・コーチは、運転中のブレーキ操作や加速、コーナリングなどを分析し、車載インフォテインメント画面と自社アプリでリアルタイムに運転上のアドバイスを提供するもの。ボルボが数十年にわたって蓄積してきた実際の交通事故や安全研究の知見とデータを活用し、ドライバーごとに変化する安全運転評価「Safety Coach score」として算出する。単に運転を採点するのではなく、自らの運転傾向を認識させ、安全な運転習慣につなげる狙いだ。
アプリの開発では米テレマティクス大手のケンブリッジ・モバイル・テレマティクス(CMT)と協業した。同社のアルゴリズムを使ってSafety Coach scoreを算出する。CMTによると、安全運転プログラムに参加したドライバーは、速度超過や急ブレーキの発生頻度が大幅に減少する傾向があるという。
ボルボ・カーズのドライバー行動専門家、ミカエル・ユング・アウスト氏は「多くの事故には何らかの『予想外』が関係している」と指摘する。周囲が予測できる速度域を維持し、急激な操作を避ければ、他の交通参加者が車両の動きを予測しやすくなり、衝突リスクを低減できるとしている。
テスラが先行、ボルボは外部保険会社と連携
自動車メーカーが車両データを保険料に結び付ける動きでは、米テスラが先行している。ボルボはこれに、安全研究で長年蓄積してきた知見をドライバーへの助言に活用する仕組みを組み合わせる。事故時に乗員を守る「車両の安全性能」に加え、事故を起こしにくい運転習慣そのものを促し、その成果を経済的メリットにつなげる狙いだ。
米テスラは「Tesla Insurance」で、車両から取得した運転データを基に「Safety Score」を算出している。急ブレーキや急旋回、危険な車間距離など複数の要素から事故リスクを評価し、米国の対象地域ではスコアを毎月の保険料に反映する。安全運転のスコアが高いほど保険料が低くなる仕組みで、現在は運転支援システム「FSD(Supervised)」の利用割合も料金算定に組み込んでいる。
GMもコネクテッドサービス「OnStar」を通じ、車両の利用状況や運転行動などのデータを活用して保険料を設定する取り組みを進めてきた。
ボルボの特長は、自社で保険商品を完結させるテスラとは異なり、安全運転を促すサービスを自動車メーカー側が提供し、本人が希望すればその成果を外部の保険会社による保険料設定につなげる構図にある。スウェーデンとノルウェーでは、利用者が運転データの共有に同意すると、保険会社Volvia(ボルビア)が利用実績に応じた保険商品を提供する。安全な運転を続ければ、保険料負担を抑えられる可能性がある。プライバシーにも配慮する。Safety Coach自体の利用を任意としたうえで、保険会社へのデータ提供について改めて利用者の同意を求める二段階の仕組みとする。
対象は2020年モデル以降で、グーグルのAndroidベースのインフォテインメントシステムを搭載するXC40、EX40、EC40、S60、V60、XC60、EX60、XC90、V90、EX90、ES90。車種や市場によって提供時期は異なる。
自動車メーカーの安全競争はこれまで、衝突安全や先進運転支援システム(ADAS)など車両そのものの性能向上が中心だった。コネクテッドカーの普及で、競争領域は「安全なクルマ」から「安全な運転を促すサービス」へ広がり始めている。ボルボのSafety Coachは、安全運転によって事故リスクを減らし、その成果を保険料という形で利用者に還元する試みとなる。安全技術、走行データ、保険を一体化したサービスが、自動車メーカーの新たな付加価値となるかが焦点になる。(2026年8月14日)