
フォードモーターは18日、欧州事業の大規模刷新策を発表した。2029年までに欧州向け新型車7モデルを投入するほか、商用車事業をソフトウエア・サービス中心へ転換する。電動化への事業集中を見直し、プラグインハイブリッド車(PHEV)や航続距離延長型EV(EREV)も含めた「現実的な移行」を図る。事実上、欧州連合(EU)の脱炭素政策の再考を迫った戦略を打ち出した格好だ。
PHEV重視へ回帰、EV一本化に異議
フォードはオーストリア・ザルツブルクで開いた欧州ディーラー会議で、新たなブランド戦略「レディー・セット・フォード」を公表。「仕事」「走り」「冒険」を柱に、SUVやラリー由来の走行性能を重視した商品展開へ回帰する。
新型SUV・電動車7モデル投入へ
2029年までに投入する新型車は、欧州生産の新型「ブロンコ」系コンパクトSUV、小型電動SUV、小型電動ハッチバックに加え、2車種の「マルチエネルギー」クロスオーバーなど。欧州専用開発を進め、アルプス山岳路や石畳、市街地など欧州特有の道路環境に対応した操縦性能を前面に打ち出す。
同時に、欧州で11年連続首位の商用車事業「フォード・プロ」を収益の柱として強化する。車両の稼働データを活用した予防整備や遠隔診断を拡充し、ディーラーを「稼働管理拠点」へ転換。修理時間を最大50%短縮できるとしている。すでに2026年1〜3月期には有料ソフト契約件数が世界で前年比30%増の87万9,000件に達し、粗利益率は50%を超えた。
さらに、電動商用車「トランジット・シティ」を投入する一方、災害対応や軍用も視野に入れた高耐久ピックアップ「レンジャー・スーパー・デューティー」も欧州展開する。欧州防衛需要の高まりを背景に、軍需・インフラ分野も取り込む構えだ。
今回の発表で注目されるのは、フォードがEUのEV政策に対し、公然と「需要との乖離」を問題視した点だ。充電インフラ不足や消費者の購入負担を無視した急速なEV化は、高排出車の長期保有を招き逆効果になると主張。PHEVやEREVを「完全EVへの現実的な橋渡し」と位置付けた。
欧州ではVWグループやメルセデス・ベンツグループなども、EV販売の減速を受けてPHEV強化へ軸足を戻しつつある。フォードの今回の戦略転換は、欧州自動車業界全体で「EV一本足打法」見直しの流れが強まっていることを改めて示す動きとなる。(2026年5月18日)